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呪い・祟り

kanaさんによる呪い・祟りにまつわる怖い話の投稿です

ドリームボックス
長編 2023/07/15 12:16 22,483view
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ボクたちのNPOでは、処分されそうになっている犬を保護し、里親を探す活動をしている。

ある日、活動部隊のメンバーが処分場から数頭の犬を保護してきた。
あと1日遅れていたら、ドリームボックス行きだったという。

ドリームボックスとは、簡単に言うとペット処分用のガス室のことだ。
捕獲され、檻に入れられた犬たちには、まず7日間の猶予が与えられる。
その間に引き取り手が現れれば助かるが、そうでない場合は1日ごとに壁が動き、
徐々にドリームボックスへと向かうよう檻がせばまってくる。

最後は犬たち自らがガス室に入るよう誘導され、閉じ込められ、そこで高濃度の二酸化炭素を15分ほど浴びることになる。犬なら最初の1~2分、猫なら45秒ほどで強烈な睡魔に襲われ意識を失う。そのまま5分も放置すれば酸欠で死亡する。その後、遺体は焼却処分される。この方法を最も安楽死に近いという人もいれば、もちろん反論もある。ガス室の窓に内側からついた多くの犬の足跡を見れば、心がざわつかない人はいないだろう。

今回そのドリームボックス寸前で救い出されてきた犬たちは、4頭が成犬のドーベルマン、
1頭が雑種の黒い仔犬だった。まだ生後6か月くらいだろう。まるで仔熊と見まがうような風体。こんなかわいい仔犬を捨てるやつがいるのかと聞いてみると、どうやらこの5頭を処分場へ運び込んだのは警察だという。

殺人事件で逮捕された男が犬のブリーダーで、証拠の一つとして飼い犬を警察で保護していたのだが、捜査も終了し、引き取り手が誰もいなかったため処分に回されたらしい。
稀にではあるが、このような事件がらみで処分される犬もいる。

犯罪者とはいえ、さすがブリーダーの飼っていた犬。どれも状態が良く、人気のある犬種でもあり、すぐに里親が見つかるはずだ。とくに仔犬は経験上すぐに里親が見つかる。
我々はひと通りの肉体的・精神的医療チェックをした後、綺麗にトリミングを施し、
譲渡会などを開いて里親探しへとつなげる。

案の定、5頭はすぐに新しい里親が見つかり、それぞれ新しい生活をスタートさせた。

・・・と、ここまでなら普通の保護犬活動としてお話しできたのだが、
この後、異様な状況となって行く。

また3か月ほどたった頃、活動部隊が処分場から保護してきた犬の中に見覚えのある犬がいた。少し成長して精悍なツラ構えになってきていたが、以前保護したことのある雑種の黒い犬だ。確認のために活動部隊のメンバーに聞いてみた。
「この犬、前に一度ウチで保護した犬じゃないのか?」

「本当か?実はこの犬・・・処分を依頼したのがまた警察らしい」

「警察って、まさかまた事件がらみ?里親さんに何かあったのか?」

我々は記録を頼りに里親に連絡を試みたが、電話は通じなかった。
組織として詳しく調べてみると、里親となった家族は一酸化炭素中毒による事故によって家族全員が亡くなっており、残された犬だけが警察の元に保護されていた。
事件・事故・自殺の観点から捜査が入り、結局事故としてかたずけられたため、この犬も引き取り手を探していたのだが、最終的に見つからなかったため再び処分場送りとなったようだった。

この犬は我々の手で2度、ガス室送りから生還したことになる。いや、里親がガス事故で亡くなったのにこの犬だけ生き残ったのだから、3度生還したことになるのかもしれない。

数奇な運命ではあるが、犬のせいではない。
我々は再びその犬と里親をマッチングさせ、送り出した。

それからまた数か月後、警察から直接「犬を保護してほしい」という依頼があり、活動部隊が駆けつけると、そこにはまたあの黒い犬がいた。

この犬を引き取った里親さんたちが、犬を連れて他県までキャンプへ向かったところ、峠道でトラックと接触し、その反動で崖から転落し家族全員が亡くなるという痛ましい事故が起きていた。唯一生き残った犬を警察が保護していたが、いろいろ調べていく中で、我々のNPOがこの犬の紹介元だということがわかり、連絡してきたということだった。

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コメント(13)
  • 何度も被害が出るのであれば偶然とは思えないのは当然で、殺処分も考えなければいけないのでしょうが、犬には罪がない。
    考えた結果、犬をお祓いしてみるのはどうでしょうか。
    今回のお話も👍

    2023/07/17/09:35
  • ↑kamaです。コメントありがとうございました。
    お祓い・・・効くといいんですが・・・。
    タイトルからして、コトリバコみたいな箱もの怪談だと思った方、失礼しました。

    2023/07/18/21:55
  • 人間を憎んで呪う、というのは人間にのみ存在する独特の感情だと思っていたけど、動物でもありえるのかな、と思いました。もはや自我を持って動き回る特急呪物ですね。この犬には遭遇したくないです。

    2023/07/20/12:41
  • これはクッチャルコシリーズに繋がるとみました!解決編期待してます(*^^*)

    2023/07/20/23:25
  • ↑kamaです。みなさまコメントありがとうございます。
    確かにこの犬には会いたくないかもですね。
    クッチャルコとの対決・・・ありそうですね。まだ先になりそうですけど。
    かなりの強敵になりそうですねぇ。

    2023/07/21/18:49
  • 先月に続き準大賞おめでとうございます。kamaさんのことだから既に朽屋シリーズの作品を考えているはずですから期待しています。

    2023/08/02/09:43
  • ↑kamaです。ありがとうございます。いつのまにかグーンと伸びて準大賞をいただけてびっくりしています。しかも準でもアマゾンギフト券3000円分もらえるんですね! も~アマゾン成金ですわ。
    また怖い話かかせていただきますので、皆様よろしくお願いします。

    2023/08/04/19:11
  • 後にその犬はスタンド使いとしてその名を勇名を轟かせるのである。

    2023/08/07/08:13
  • kamaです。こちらのお話、韓国語にも翻訳され、向こうの怪談朗読サイトで配信されたようです。感謝です!見ましたが韓国語なのでぜんぜんわかりませんでした!!

    2023/08/08/22:32
  • 犬は、何かにとりつかれているんかな?退職した人は〇んだと思います。〇んでなかったらごめん(m´・ω・`)m ゴメン…

    2023/08/19/21:50
  • 確率の魔、数百万の1などで生まれる、王様的、時のリーダー的な犬かも、

    2023/08/22/08:30
  • 【ドリームボックス2.0】公開中です。

    2023/12/16/13:02
  • 月並な事しか言えないけど、
    面白かった!

    2024/08/24/18:57

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