悪魔とミュージシャン
投稿者:イエティ (51)
とある元バンドマンの話。
2001年4月、俺はとある小さなライブハウスで、
インディーズバンドのライブを見ていた。
その日は4組のバンドが参加しており、
その中で群を抜いて人気だったバンドがあった。
歌も演奏も上手いし、メジャーデビューも間近じゃないかなんて言われていた。
そのバンドのボーカル、Sは地元の後輩で、
高校時代一緒にバンドをやっていた過去がある。
俺は就職とともに音楽から離れてしまったが、
Sは音楽で生きるんだと決意して、バイトをしながら活動を続けていた。
口癖なのか、「音楽は人を変える」とよく言ってたっけ。
ライブが終わり、久しぶりにサシで飲みに行こう、という話になり、
出待ちのファンに一通り対応した後、俺たちは居酒屋に向かった。
「相談があります」
ビールで乾杯した直後、開口一番にSが言った。
内容は、今あるレーベルからメジャーデビューの話が来ている。
でも、バンドとしてのレベルはプロレベルじゃない。
バラード系の曲も人気だし、ソロでデビューしないか?と言われているそうだ。
ソロデビューするにもバンドメンバーに申し訳が立たないし、
精神面があまり強くないSは、ギター担当でバンドのリーダーであるKに、
支えてもらいながら活動していた。
メジャーデビューは夢だけど、Kなしにはとてもやっていけない。
Sは音楽で生きていくと両親に打ち明けたとき、
勘当同然で家から追い出され、友人や教師にも馬鹿にされた。
「見返してやりたい」
そう思っていたSは、メジャーデビューは願ってもない話だった。
でも、一人ではとてもとても…
俺は他のバンドメンバーにも面識があったし、
バンドメンバーの気持ちを考えると、全員でレベルアップして、
全員でメジャーデビューしてほしい。
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