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心霊

川辺に咲くさんによる心霊にまつわる怖い話の投稿です

通ってはいけない小道
長編 2026/08/11 09:27 49view

実家に帰省するたびに思い出す出来事があります。

私が高校を卒業するまで住んでいた実家は、都会ではないものの、すごく田舎というわけでもない、ごく普通の町にあります。

私には歳の離れた姉がいて、長女気質で優しい姉は私の憧れでしたが、私が中学に上がる年に就職し実家を離れたため、年に数回の帰省時に顔を合わせるだけになりました。

昔から姉は「あそこには行かないようにね。」
と言う場所がいくつかありました。
私が理由を聞いても、少し困ったような表情で「…危ないから。とにかく行かないで。」
とだけ言い、なんとなく詳しい説明を避けているようでした。
確かに、ザリガニが取れる沼や、つぶれたボーリング場跡地、橋のたもとから河原に降りた所など、それなりに危なそうな場所もあったので、当時の私は「姉がそう言うならそうなんだろう。」くらいにしか思いませんでした。

そんな『行ってはいけない場所』の中に、「日が落ちてからはあの道を通ってはダメだよ。」
といわれていた小道がありました。

家のすぐ近くにあるその小道は、最寄駅から自宅までの最短ルート上に位置するため、朝の通学時はその小道を通って駅まで行くのですが、帰宅が夜になる場合はぐるりと迂回して帰らなくてはなりません。
車一台がギリギリ通れるくらいの細さで、両側に広大な観賞魚の養殖池が広がる、150メートルほどの真っ直ぐな砂利道。
“道”というよりは養殖業者の私有地で養殖池の管理用通路なのですが、近所の住人は生活道路として利用していました。
街灯はなく、夜は養殖池を仄かに照らす青白い灯りがぽつぽつとあるのみの薄暗い道ですが、大通りに面した入り口から見通すと、道を抜けた先には住宅街の街灯や家々の明かりが見え、その住宅街を更に200メートルほど進めば自宅です。
“危険を感じる場所ではない”というのがその小道の印象だったので、なぜ夜になると通ってはいけないのか謎でしたが、言いつけを守って日が暮れてからは小道を通らないようにしていました。

私が高校3年生の夏休みのことです。
その日は久しぶりに姉が実家へ帰省してきているというのに、バイト先から連絡があり急遽シフトに入る事になりました。
しかもバイト帰りにたまたま遭遇した友人とお喋りに花が咲いてしまい、気づけば1時間半以上も話し込んでしまいました。
このままでは帰宅が夜12時を超えてしまいそう。
いくら夏休みとはいえ私も友人もさすがに焦り、急いで帰路につきました。

「あぁ、お父さんに叱られる。」
憂鬱になりながら自転車を漕ぎ、例の小道がある大通りまで来たところで一度時刻を確認すると、PHSの液晶は0時3分を表示していました。
「まずい、12時を過ぎてしまった。」
と思うと同時に「あの小道を通って養殖池の間を突っ切れば、少し早く家に帰れる。」
と思いたち、小道の入り口まで自転車を走らせ覗き込むと、暗い小道を抜けた先に住宅街の明かりが見えました。
急激に普段この道を避けているのが馬鹿馬鹿しく感じられてきて、そのまま小道に自転車を進めました。

途端に水生生物特有のプランクトン臭が辺りに立ち込め、一気に湿度が上がったように感じました。
「うわ、生ぐさ〜。暑いからかなぁ…。」
などと思いながらも漕ぎ進め、小道のちょうど中央あたりに差し掛かったあたりで、不意に後ろからふわりと冷気を感じ、自転車を走らせながら何気なく後ろを振り返ると…。
私の2メートルくらい後方を、誰かが走ってくるのです。
思いがけず出現した人影に「えっ、いつの間に?どこから現れた!?」
と驚き、思わず自転車を漕ぐ速度を上げました。

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