何度も倒れる車椅子

看護師3年目で夜勤をしていたときに起きたお話です。当時認知症が強く毎日転倒する患者さんがいました。

ご家族の了承を得て昼夜問わず車椅子に乗っていましたが、状態が悪化したためその患者さんは私が夜勤に入る前に他院へ転院となっていました。なので「今日は静かな夜になりそうだね」ともう一人の夜勤者と話をしていたのです。

ところが深夜2時を過ぎたころ、私は巡視を終えてナースステーションで電子カルテで記録をしていると「ガタン」と音がしました。「やだ、誰か転倒したのかしら」と二人で音がした方を見に行くと車椅子が一台倒れていました。壁付けにしてきちんと立ててその場を離れましたがしばらくすると、また「ガタン」と音がするのです。詰所の外を出てみましたが誰もいないし、転倒している患者さんはいません。気のせいだったのかと思い、中へ入ろうとした時、また「ガタン」と音がするので気味が悪くなりました。

「もしかしてまた車椅子？」と思って見にいくと、案の定先ほど起こしたはずの車椅子がまた倒れていました。風もなく他の車椅子は大丈夫なのになぜかその1台だけ頻回に倒れる。出勤した日勤スタッフに聞くと「それ、例の患者さんが乗っていた車椅子だよ」と言われぞっとしました。

どうやらその患者さんは転院し間もなくしてお亡くなりになったそうです。後日その車椅子は古い事もあり、お祓いをして処分されました。