足元に見える鬼
投稿者:千心 (17)
短編
2022/01/23
00:56
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病院で働いていると不思議な経験をする事があります。
「状態は安定してるから、ベッド上のリハビリをよろしく。」
主治医にそう言われ、新しい患者さんの担当をさせてもらう事になった。早速お部屋に行き、まずは自己紹介。枕元で名札を見せながら、ゆっくりと聞き取りやすいように。すると笑顔で「はい、よろしくね。」と返してくれ、優しい患者さんで良かったと安心した。
そして足元に移動してリハビリをしようとすると「帰れ!鬼!あっちに行け!」と驚くほど大きな声で怒鳴りつけてきた。認知症の影響もあるのだろうが、急に変わった患者さんの表情や声に驚いた。
「いつまでおるんや!鬼!殺す気やろ!」とこっちを見ながら…。「そんな事しません。大丈夫ですよ?」そう言うと、患者さんは「違う!アンタに言ってない!…この鬼に言ってるんや!」と人差し指を向けた先に誰も寝ていないベッドがあった。
次の日、その患者さんは亡くなった。
病状が急変したらしい。驚きを隠せなかったが、看護師に昨日の鬼の話をしてみた。
「あぁ…そのベッド。前日に別の患者さんが亡くなったベッドだね…。」
患者さんが亡くなる時、1人だと寂しいから誰かを連れていく事があるそうです。
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