釣り日和に船長の表情は、曇りがちだった。
私しか釣り客がいないのでは、確かにもったいない気分になるだろう。
ポイントに到着し、船長の指示に合わせて仕掛けを下ろす。
重たい手応えが竿にあった。横走するのを釣り上げてみると、丸々太ったカツオだった。
2匹目。
3匹目。
そして4匹目。
「ん……妙に軽……」
カツオは、首から下がなかった。
直後、流木にぶつかったような衝撃があった。
(甲板にいたら落ちる!)
私は船室に滑り込んだ。
「陸に戻る」
船長はエンジンの回転数を上げ始める。
「え、サメだけで?」
「この辺りは最近、サメが出ると」
次の瞬間。
文字通り船が持ち上がった。
窓の外には、白と黒の模様があった。
「シャチが来る」
シャチの口には、巨大なサメの下半分をくわえていた。
「どこかの馬鹿が、人間が怖くないと教えちまった」
反対側に大きく揺さぶられる。
もう1匹のシャチが起こす大波で、船はまた浮き上がるほど揺れた。
「奴らは人間で遊ぶ事を覚えた」
船長はスピードを上げた。
揺さぶられ続けながら、数十分追いかけられた。
陸が見えて来た時。
激しい衝撃があった。
船体のFRPの割れる音がはっきり響いた。
「壊れ?」
「すぐには沈まん!」
全速力の船体が大きく揺さぶられ、後部からバリバリと音がした。
この話は怖かったですか?
怖いに投票する 13票

























どこの海だったんでしょうか?
日本だと北海道の根室海峡で見られるとようですが、群れでサメ捕獲するのは知ってましたが船にもそんな事するんですね。