引きずり込まれないで良かったね

子供の頃になりますが、夏の暑い時期に日本海側のかなりマイナーな海水浴場に行きました。

その海岸は国道沿いにあり、岩場が多くて海の真横は絶壁という地形でした。

そのためカニや小魚が多くいて、網で捕まえるのも楽しみでした。

その海はとても静かだったのですが、海水浴客はほとんどみられませんでした。むしろ人が少なくてラッキーみたいな感じもあったのですが。

浮き輪にのってぼーっとしているうちに、少し沖のほうまで流されているのに気が付きました。

慌ててバタ足で海岸に戻っていくのですが、妙なことに気が付きました。

なにか岩場の影になったところに人がいたのです。

しかも首だけが水面から出た形で。それは家族でもないし、近くにいた海水浴客でもありません。

じっと見ているとさっきまで居たはずが消えていたのです。

水中にいるのかと思って見るのですが、水深2～3mの海底を見ても、どこにもいません。岩場も高くないし、隠れる場所もないのに居なくなっていたわけです。

最初の顔を思い出すと怖くなって、バタ足を加速させていました。

地元の人に言うと、引きずり込まれないで良かったねと言われ、ゾッとしたので二度と泳ぎませんでした。

後で知ったのですが、その海域は時々自殺者も出ているところだそうです。