離れの住人
投稿者:とくのしん (65)
これは親父から聞いた話。
親父の同級生に住職の友人がいる。
実家は由緒あるお寺だそうで、その檀家で起きた話だという。
その住職曰く、心霊的な相談は年に1~2件ほどあるが、大抵は勘違いによるものがほとんどらしい。
極稀に説明がつかないような出来事があるそうだ。
今から20年ほど前、ある檀家から相談を受けた。
先月、離れに住んでいた者が死んでから、母屋で変なことが起きるという。
その檀家から家の者が亡くなったという連絡もなければ葬式があったという話も聞いていなかったことから変だな?と思ったそうだ。
その檀家は地区では比較的大きな農家で母屋の隣に納屋と離れがあった。
離れは母屋に比べると大分古く、一言でいえばボロ家。てっきり無人と思っており、納屋と同様に物置かと思っていたそうだ。
家柄も良く、法事の類は欠かすことのなかっただけに、今回の知らせは驚いたという。
稲刈りの時期ということもあって忙しかったのかと、納得できる理由を考えながら向かった。
その家につくと一目見て敷地全体が重苦しい雰囲気だったそうだ。
件の離れだけでなく母屋と納屋からも、言いようのない不気味さを感じたという。
玄関から土間を通って居間に案内され、話を聞くことに。
主人のMは住職に、離れには遠縁の者が住んでいたが亡くなって以来、妙なことが起きるようになったと言った。
具体的には、誰もいないはずの部屋から声が聞こえる、足音がする、閉めたはずの戸が開いているなど。
あぁ、なんだそういう話か。どうせ勘違いの類だろうと思っていた。
先程感じた不気味さも住職自身の勘違いによるもので、お経を唱えて終わりだろうと高をくくったそうだ。
では離れでお経をあげましょうかということになり、離れに向かった。
と、離れの玄関が少し開いており、そこから男がこちらを見ていたそうだ。
男は50~60代くらいの細めの男で、鋭い目つきをしていたそうだ。
あんな人いたかな?と住職が思ったそうだが、ふと視線を外すといなくなっていた。
離れにつくと主人が「また玄関が開いてる」と呟いた。
鍵をかけたはずなのに勝手に開くんですよという。
中に入ると背筋が凍るような感覚を覚えてそうだ。
二部屋程の小さな離れで奥の部屋に古い仏壇があった。
そこでお経をあげようと部屋にあがった瞬間に、数珠が切れた。
住職の父からそういうことがあったという話は聞いたことがあったが、自分がそういう場面に出くわすとは思いもしなかったそうだ。
お経を唱え始めるとクラクラと眩暈がし始めた。こんなことは初めてだったそうだ。
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