ひょっこりさん
投稿者:with (43)
俺は高校の頃、窓から覗いてくる変な女を見たことがある。
そいつはどちらかと言えば青白く、どちらかと言えばギョロ目で、どちらかと言えば眉尻にかけて細かったと思う。
と言うのも、俺の記憶が曖昧になっていて、いまいちその女の顔のパーツがよく思い出せないんだ。
初めてその女を見かけたのは、夜遅くまで宿題をしていた深夜の事だった。
一通り片付けた後背伸びをしていると、ふと窓辺に視線が動き、例の女を見つけてしまった。
窓の角地におでこを擦りつけるようにして、不気味な顔を覗かせていたものだから、当然俺は突拍子もないことに悲鳴を上げて転がった。
幸い両親は就寝中だったのか起きて来なかったが、俺は暫くその女と顔を見合わせて硬直し、やがて何もしてこない様子から敵意がないと判断した。
敵意がないとわかれば、今度はその女が何者なのか気になった。
俺は恐る恐る窓辺に近寄り、遠巻きながら女に胴体があるのか覗き見ようと試みたが、女はスーッと身を隠したかと思えば完全に消え去ったんだ。
目の前から消えた事で胴体を確かめることなく、その女が幽霊だったと俺は断定した。
どうして俺の前に現れたのかはわからないが、俺は心霊体験をしたのだと、謎めいた気持ちが込み上げてハイテンションになったのは覚えている。
翌日、学校の友達にその事を話すと、
「嘘くせー」
「今度写真よろしくな」
などと、上辺以上に信用していない言葉が出るわ出るわで、俺は小さく憤慨した。
ただ、写真を撮りたくともまたあの女がやってくる保障もないし、そもそも写真に写るのか?なんて考えも巡ったので何も言い返せなかった。
その日の授業中、呆然と外を眺めていると、昼間だと言うのに例の女が窓の一角から顔を覗かせて俺の事を見ているではないか。
そのことに気づいた俺はすかさず教師に気づかれないようスマホを取り出すが、カメラモードに切り替えた瞬間に女は消えてしまった。
「さっきさ、窓の外から女が覗き込んでた」
「はいはい」
昼休憩に友人を捕まえて先ほどの体験を話すと、友人は軽くあしらうように手を払った。
その時、ちょうど階段の踊り場だったため、手を払われた直後、俺はバランスを崩して階段を踏み外した。
足元がガクっと下がる瞬間、階段下の曲がり角から例の女が覗き込んでいるのが見えた。
俺は思わず足を踏ん張り、階段から転げ落ちる事を回避するが、顔を見上げるとやはり女は既に消えている。
友人は必死に謝りながら俺の体を支え「悪い。大丈夫か?」などと慌てていたが、俺はそれよりも女の存在が気になり始めていた。
それから数日後、奇妙な事が起きた。
コンビニに寄った帰り道、もう何年も通い慣れた道を辿っている道中、信号待ちをしていると反対側の道路の電柱の影からあの女が顔を突き出しているのが見えた。
朝でも夜でもはっきりと浮かぶ青白い肌は、やはり昼間でも目立つ。
信号が切り替わり歩行者がちらほらと横断歩道を渡し始めるが、俺は提げたレジ袋を握りしめ微動だにしないまま女を見ていた。
すると、キキーッというけたたましいブレーキ音が鳴り響き、横断歩道を渡っていた歩行者が自動車に撥ねられた。
と言ってもそこまでスピードが出ていなかったのか、一メートルも満たない距離を突き飛ばされたにもかかわらず、歩行者は自ら起き上がり打撲した箇所を摩っているようだった。
普通に面白い
こわい
おもしろい
後から今までの考えが一気にひっくり返されるところが恐怖
なぜ最後冷静?