河童の手招き
投稿者:上龍 (34)
短編
2022/02/18
22:21
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これは祖父の田舎で幼い頃に体験した話です。
父方の祖父が住んでいるのは自然豊かな東北の田舎で、妖怪の言い伝えやおとぎ話が広まっていました。
当時小学3年生だった私も妖怪の存在を信じており、「川の深みに行くなよ、河童に引き込まれるからな」と祖父に言われるがまま、浅瀬で水遊びをしていたのですが……。
川岸で綺麗な石ころを拾って遊んでいると、だしぬけにばしゃんと水音が立ちました。
反射的に振り返れば川の深みから一本腕が突きだし、こちらを手招きしています。
「河童だ!」
祖父の注意を思い出した私は、川に引きずり込まれてはたまらないと手に持っていた石ころを力一杯投げ付けました。
そのうち一個が腕が生えた川面にあたり、「ぐえっ」と呻き声が上がったのを最後に静かになりました。
「よかった、河童が消えた」
安堵のため息を吐いて家に戻ると、祖父母や両親が血相変えて走り回っていました。
「どうしたの?」
「隣のばあさんが山菜取りに行ったきり戻らんのじゃ。足を滑らせて川にでも落ちたのか」
翌日、お隣のお婆さんの溺死体が引き上げられました。山の斜面から転落したのではないかと鑑識の人は言っていました。
おばあさんの額は石で割られていました。
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