曰く憑き物件
投稿者:サクコウ (15)
これは私の姉から聞いた知人の話である。
知人であるE子は結婚をして子供も授かり順調な結婚生活を送っていた。
子供が保育園から小学校へ通い出す時期をきっかけに双方の実家暮らしを辞めて年数の浅い中古の戸建て住宅を購入するにあたった。
以前の持ち主が手放した理由が旦那さんが離れた場所で勤めている関係で手放すという事で家の状態も良く手頃に思えた。
しかし順調であったE子の結婚生活がこの中古住宅を境に逆境に入り始める。
まず住宅ローン返済の為に今まで以上に生活費を切り詰める必要性が出てきた。
だがこれは当然の事でどの家庭でも同じ事だ。
次に旦那が通勤するには遠い場所の住宅地であったという事を踏まえて購入に至ったわけだが実際の生活を送る中で、毎日通勤する大変さを実感して旦那が帰宅せずに旦那の実家で生活しながら勤めるという生活に変わっていった。
そして旦那が休日に帰宅するかしないかという生活が続いている事もありE子と子供もE子の実家で生活するようになり購入した中古物件にはほぼ誰も居ない日々が続くようになった。
そんな生活が数年続いていくと、旦那とE子や子供が双方の実家暮らしで親子関係に歪みが出てきて不和状態になっていった。
子供も小学校で上級生になる頃に登校拒否になりE子の実家にひきこもるようになり医者に診てもらったところ発達障害と判断された。
度重なる不和状態とトラブル続きでE子自身も心身共に病んできてまともに食事が摂れない状況が年々悪化していき最終的に度々倒れ救急搬送のち奇跡的に一命を取り留めるという状況になった。
ここまで記載すると悲惨で大変な話ではあるが世知辛い世の中では当たり前に誰にでも起こりうる話であると思われる。
しかしE子がまともな生活が送れないどころか病院生活が長引くということで旦那や両親との話し合いの結果で身の回りの整理や購入した中古住宅を手放すということになった。
その流れで不思議な事を知ることになる。
以前の中古住宅の持ち主と連絡を取る機会があり現在の状況を少し話すと驚かれた。
以前の持ち主もE子達と同じような境遇や現象が起きていたのだ。
多少の違いはあれど似ている点が多々あった。
それが住宅を売却して心機一転の生活を始めてからというもの再び順調な生活に戻っていったそうだ。
以前の持ち主の話を聞いてから後日不動産屋さんを通して売却する事にした。
そこで再び意外な話を聞かされる事になる。
以前の持ち主は知ってか知らぬかわからぬがその住宅はちょっとした事故物件という事を不動産屋の担当員から聞かされる。
自殺があったとか死亡事故があったわけでないが、実は以前の持ち主の前に最初の持ち主である家族が居たという事と、その家族の旦那が日常的にDVを起こす人でありそれに疲労しきった奥さんが旦那を刺して警察沙汰になり、家をその際にクリーニングしたそうだ。
その話を聞いたE子の家族はなんで前もって購入前に事前に説明してくれなかったか問い詰めたが不動産屋はあくまでE子に売却したのは以前の持ち主の方なので当店はそこに介入していない為に責任は取れないので以前の持ち主に問い合わせて下さいとの一点張りであった。
旦那とE子家族が相談した結果、それでも住宅をこれ以上は売却しなければならないという事で購入時より格安で不動産屋に売却する事になった。
金銭面では多額の損をしてしまったが、E子自身も気持ちがスッキリしたのか体調が回復していき生死を彷徨ったところから普通の生活が送れるようまでになった。
以前は不和状態だった結婚生活も日々修復されるように改善されていき、それぞれが完全までとは言えないまでも肯定的にそれぞれの人生を歩み始めていった。
人生のどん底まで落ちたE子がその反省点を噛みしめながら前向きになんとか生活を軌道にのせる事が出来る様になったが、やはり時々以前購入した中古物件を思い出し気になる。
そして、1~2年ほどで二組の家族が住んでは離れていった姿を知ることになった。
それからしばらく空き家が続いた後にその家が取り壊される現場を見た。
E子が他人の振りをして現場の作業員が休憩しているのを見計らって話を聞くと、何組もの家族が住んでは手放すの繰り返しで、あまりに評判が悪くなってきたので駐車場に変えるとの事らしい。
話を聞いているとベテランの作業員の男性が近づいて来て「この家の前は火事が起きて建て替えたんだ。」と話してくれた。
E子は話を聞いて原因はわからないがいわくつき物件と言うよりこの場所や土地に何かがあるのではないかと思った。
すごくリアリティのあるお話でした。ありがとうございました。