「おめどご嫁にはむげ入れね」
投稿者:空穂 (6)
Kくんは畳の上にあぐらをかき、ゆらゆらと揺れる蝋燭の灯りを見つめた。
初めは緊張していたKくんだが、長旅の疲れに加えてお酒を飲んだこと、さらに深夜2時という時間もあり、次第にウトウトしてしまった。
ハッと目を覚ましたとき、すでに番を始めてから20分は経っていたそうだ。
ヒタヒタという足音と、何か布のようなものを引きずる、ズルズルという音が聞こえてきた。
交代にはだいぶ早い気がするが、次の人が来たのだろうか?
Kくんが廊下の方を見ていると、障子の向こうに、ユラユラと人影のようなものが映った。
妙なことに、その影は頭の形が不自然に大きく角ばっており、何か布のようなものを長く引きずっているように見えた。
人影は、部屋の前まで来ると、ピタッと立ち止まった。
Kくんは、その人が中に入ってくるのを待っていたが、不思議なことに人影はそのまま微塵も動かない。
あれ?交代の時は、声もかけずにすぐに中に入ることになっていたんじゃなかったっけ?
Kくんが不審に思ったその時、障子の向こうのその人物が、小さな声でこう言ったそうだ。
「嫁来る約束だったんべ
おらが嫁さ来でけだぞ」
若い、女の声だった。
しかし、喉が潰れたような、しわがれた声だった。
Kくんが動揺していると、その声はまた繰り返した。
「嫁来る約束だったんべ
おらが嫁さ来でけだぞ」
Kくんは唐突に、障子の向こうにいる人影がなぜ奇妙な形をしているかに気がついた。
あれは、花嫁衣装だ。
打ち掛けを羽織り、角隠しをした、昔ながらの和装の花嫁衣装を着た、若い女なのだ。
そう思い当たると、Kくんは全身の血の気が引いていくのを感じた。同時に、義母から言われた言葉を思い出し、震える声をなんとか振り絞った。
「お、お、おめどご、嫁にはむげ入れね」
障子の向こうの影が、ユラリと揺れた。
「嫁来る約束だったんべ
おらが嫁さ来でけだぞ」
しわがれた女の声が響く。
Kくんは必死に声を大きくした。
「おめどご嫁にはむげ入れね」
ユラリ。また、影が揺れる。Kくんは、その人影が先程よりも大きくなっていることに気がついた。
おもしろかった!!
なんとなく八尺様を思い出しました
Kくんお疲れ様です。
先祖と時代が違うってのを教えてあげなくちゃ逝けないね!
男衆は生贄みたいなものかな
でも見ちゃったらどうなるんだろう
次その風習に参加するときは、貴方のほうから、「貴女をひどい目に合わせた人はもうここには居ない」と説得し納得させたみてはいかがでしょうか。
じゃないといつまでもその風習は終わらないし、その女性もうかばれない様な気がします。
本家だけに執着してるようだから
無くしちゃえば?本家。
万が一義弟夫婦に子供が産まれなかったらいい機会。
もう養子縁組だの新しい嫁で再婚だの余計なことをして本家存続はしないように。
田舎のいかにもな話だな。バケモンも大変だ。
何も事情を知らぬ、血縁者でもない親戚をわざわざ呼び付けて参加させる意味は?
頭数は多ければ多いほどいいってこと?
事情を知らない人間を入れると失敗する恐れがあるのにね。
いかにも片田舎にありそうないわくつきの話です。
無念の死を遂げた不憫な娘の怨念は、そう簡単に消えることはないでしょうが、もうかなり昔のこと。未だに誰一人成仏させてあげられないとは情けない。大の大人たちが、事情も知らない部外者まで巻き込み、ただただ怯えおののくだけの体たらく。読みながら怒りすら湧いてくる胸糞話ですが、内容ストーリ展開、実話かどうかは定かではないが、面白く読めました。
方言から見て秋田県の県南地方なのかな。面白かったです。
話に引き込まれ凄く面白かったです。
相手にしてみれば、酷い仕打ちを受けそれでも律儀に嫁に貰ってくれと出てものの、拒絶され続ける事を考えると何とも理不尽で切ない話でした。
もし、失敗した時はどうなるのか?怨みの強さから恐ろしい事になるのは必至ですね。
大丈夫。慣れる。
あちゃー、このセリフ、噛んでしまいそう。
途中までエロ漫画展開かと思ってしまった
悲しいお話だった
滅多に出会えない上質な怪談でした。ありがとうございます。
子孫に罪は無い?拒み続けて傷付け続けて罪は無い?
そんなクズみたいな家系は廃れてしまいなさい。
子孫に罪はない。
「もし自分の親が殺人者だった時、自分が償う」そういう気概を持った奴だけが、彼らを避難できるとは思う。
私は親に罪や借金があった場合相続を拒否すると思う。
逆に自分が被害者だった場合、犯人を死ぬほど恨むが、その子供達に牙を剥くことは無い
怪異とは、これくらいの距離感が心地いい。