おばあちゃんと母
投稿者:キミ・ナンヤネン (88)
「娘さんもいることですしちょうどよかった。これから話すことは重要な事です。お二人ともよく聞いてください。」
と言って話を始めました。
「おばあちゃんは毒物か薬物を摂取された可能性があるのですが、そうだとすると、このT病院では治療が難しいのです。」
少し間を開け、話を続けました。
「だから近いうちに、ここから少し離れているんですが、薬物の専門の医師がいるU総合病院に転院する話を進めているところです。」
この町では最も大きいこのT病院でも、治療に限界があるようでした。
それを聞いた母は涙目になり
「それじゃあ、母と私はどうすればいいんですか?先生が、先生だけが頼りなんです!」
と訴えました。主治医は、
「そうなれば私はお役御免ということになります。あらゆる面で、U総合病院が適切な治療ができるかと思いますよ。」
すると母は
「何か相談に乗ってもらおうとしてこのT病院にいたら、先生に会えますか?」
「いや、この病院内にいたとしても、この広い病院では会う事もなかなかないでしょうし、私にはこれ以上は難しいかもしれません。」
主治医は冷静に、そしてまるで母に会いたくないような様子でした。
「U総合病院に転院する日が決まったらまたお知らせします。」
そう言って主治医は病室を出ていきました。
考えてみれば、母から送られた手紙は、主治医の話が次第に多くなっていった事に気が付きました。
どうやら、母は主治医を一方的に想っていたようでした。
おばあちゃんが入院している間は先生に会えると思っていたようです。
幸い、おばあちゃんは転院してからは回復し、何年も経った今でもとても元気にしています。
そして、その後あの写真を探してみましたが、1枚も見つからないままです。
母は、学校を卒業してから今まで30年以上、ずっとT病院の看護師をしていて、特に薬の扱いが得意だそうです。
何とかシンドロームって奴かな?