みんなの中に生き続けるケンちゃんの話
投稿者:心結 (5)
これは私の祖父母の家がある町で有名なお話です。
私の祖父母の家は、海岸沿いの砂防林の目の前に建っています。
夏休みになると、親戚の子供たちはみんなこの家に集まり、海の家のようにして遊んでいました。
海岸までは歩いて30秒くらい、2Fの窓からはどこまでも続く日本海を見渡すことができるのです。
私が小学校低学年の夏休み。
1週間程度、祖父母の家に泊まり込み、従妹たちと一緒に毎日、毎日海へいって遊び、夕方には夕日で空が真っ赤に染まる中、みんなでお昼寝。
祖母が作る夕食のにおいにそそられて目を覚ます・・・という日々を過ごしていました。
夜には花火をして、いつもよりちょっと夜更かしをする。そんな毎日が楽しくて仕方がなかったのです。
ある日、いつものようにお昼寝をしていたのですが、目を覚ますと辺りは真っ暗。
下の部屋からはみんなの楽しそうな声が聞こえてきていて、夕食を食べはじめるときでした。
慌てて下に降りようと飛び起きたとき、ふと海側の窓から視線を感じたのです。ですがここは2F。
家の裏の松林にはタヌキやキジ等、野生動物も住んでいるため、きっと何か動物だろうとその時は気にしなかったのです。
夕食が終わり、その夜は近隣の家の子供たちみんなで花火をすることになっていました。
さっきは慌てて起きたので、2Fの部屋の電気を消し忘れていることに気が付き、私だけ一人部屋に戻ったのです。
すると、さっき視線を感じた窓がガタガタと音を立てました。
風も強くないのに、おかしいな。そんなことを思いながら窓の方へ近づくと、そこには幼い男の子がいたのです。
服はびしょびしょに濡れてボロボロで、肌の色は青白く、瞬間的にこの子は生きてないなと思ったのです。
急いて電気を消して、下の部屋におりました。
何事もなかったかのように花火へ出かけたのです。
花火に集まったのは大体10人くらい。にぎやかな夜でした。さっきの出来事が気になって、にぎやかな声もどこか遠くに聞こえているような感じがしました。
楽しく過ごして早く忘れようと思い、花火を手にふと視線を移した時。なんで?さっきの男の子が一緒に花火をしています。
ですが、誰かが話しかけるわけでもなく、ただ私たちの近くで楽しそうにしているだけ。いてもたってもいられなくなった私は、祖母にこのことを話したのです。
すると、祖母は一瞬、どこかさみしそうな表情をし、「あとでおうちにかえったらね」とだけ言いました。
花火を終え、家に帰り、私は祖母と一緒にお風呂に入り、見たものすべてを話したのです。祖母は重い口を開き、穏やかな口調で話し始めました。
「その子はね、お隣のそのお隣の次男だよ。
もう何十年も前だけどね、夏休みに海で遊んでいるとき、高波に飲まれてしまって溺れてね。
近所中みんなで助けにいったんだわ。大騒ぎの日だったよ。
うちのおじいちゃんがみつけてね、
砂浜に引き上げて心臓マッサージをしたんだけども、もう遅くてね。
まだ6歳くらいだったと思うんだけどね、亡くなったんだよ。
お盆に帰って来るんだろね。
いい話ですね。
座敷童子のような、神格化された存在になっているのでしょうね。
その街の子ども達を守ってくれる存在でいて欲しいです。もう悲しむ人がいませんように。