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不思議体験

二槽式さんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

“ナニカ”のおかげ
短編 2021/11/07 10:52 1,268view
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 この話は、私が小学校一年生の時、実際に体験したことです。

 その日、小学校からの帰り道は、酷い雨が降っていました。

 私は途中の道でいつも一緒に帰る友人と別れ、段々と強くなっていく雨に嫌気がさし、びちゃびちゃになった靴の気持ち悪さに半泣きになりながらも、いつもより早歩きで俯きがちに、自宅への道を黙々と歩いていました。

 酷い雨の中、いくら傘を差していても足元は水浸しで体も冷え、それに比例するように気持ちもどんどん沈んでいくようでした。

 歩きなれている通学路のはずなのに、土砂降りのせいで見通しが悪く、何だか全然知らない場所を歩いているようにさえ思えてきました。

 あと一〇分も歩けば家に着く、と必死に自分を励ましていた時です、交差点に差し掛かり、道路を渡ろうとしていた時にそれは起こりました。

 左右を確認し、車が来ていないと思った私が道路を渡ろうとしたら、突然、背負っていたランドセルを強い力で引っ張られたのです。

 力に負けて尻餅をつき、何が起きたのか分からず呆然としていた私の目の前を、一台の車が走り去っていきました。

 私は、あまりの驚きで数分ほど座り込んだままでしたが、突然後ろから聞こえた車のクラクションの音に、ハッと振り返りました。

 ヘッドライトの眩しさに目を細めながらも、じっと車を見てみると、運転席から祖母が心配そうな顔でこちらを見ていました。祖母は私の側に静かに車を止めると、窓を開けて私に車に乗る様に言い、車に乗った後も、座り込んでいた私に、何かあったのかどこか怪我でもしたのかと心配そうに言いました。

 私は、祖母のその言葉で、やっと実感したのです。

 私が歩いていたところは、住宅街の狭い道路で、普段はそれほどスピードを出して走る車はいません。

 酷い雨の中、ヘッドライトを点灯していない車は見えづらく、雨音で車の音も聞こえづらい状況でした。

 私はあの目の前を走り去って行った車に、一切気付いていなかったのです。

 もし、あの時、“ナニカ”にランドセルを引っ張られていなかったとしたら、私は、あのまま轢かれていたのではないかと。

 未だに、あれは何だったのか、私にはわかりません。

 しかし、あの“ナニカ”のおかげで、私が助かったのは確かなのです。

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関連タグ: #事故物件#学校#雨
コメント(1)
  • 怖いというより有難いこと。御先祖様ですかね。

    2023/05/13/07:56

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