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二槽式さんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

8号棟 ~存在しない5F~
短編 2021/10/24 00:33 1,501view
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 私の通っていた大学には、十数年前に新設されたという“8号棟”がありました。大教室やキャリア支援室、音楽室などがある比較的大きな棟でしたが、私の履修していた講義ではB1~3Fまでしか使ったことがありませんでした。

 その8号棟には、学生たちの間でとある噂がささやかれていました。『あの棟って、霊道なんだって』。自分の通う大学が心霊スポットなんて! と、噂話の好きな女子学生や後輩を怖がらせたい上級生たちによってその噂はほとんど学生の中では周知されており、流行りの話題に疎い私の耳にも飛び込んでくることとなったのです。

 当時、私は入学してまだ2か月しか経っておらず、広い大学の構内は巨大迷路に等しいものでした。ある日の夕方、空きコマの暇つぶしの仕方も知らない新入生の私は若い好奇心に負けてしまい、“噂の8号棟”を探検してみようと思い立ったのです。

 まずは地下。普段も使うことのあるフロアでしたが、なんとなくじめっとした空気が私は苦手で、そそくさと階段を上り地上フロアへと移動しました。1F~3Fは大教室がメインの比較的明るく人通りも多い階。

 問題は、その上です。まだ足を踏み入れたことのない場所、いつの間にかに私は興奮気味になっていました。

 高鳴る鼓動を抑えつつ階段を上り、4Fに到達します。

 音楽室のある階と聞いていた通り、うっすらと木管楽器の低い音が響いていました。ここは変な雰囲気もしないな、やっぱり噂はうわさでしかなかったのね、と階段を上り、踊り場から上を見上げて、私は立ち止まりました。

 十段弱の階段の上、そびえたつ柱に描かれた“5”の数字が、やけに恐ろしく見えたのです。新しい棟のはずなのになぜかかすれたゴシック体のそれは、今までのフロアとは確実に違う何か異様な雰囲気を放っていました。

 『これは、ダメなやつだ』

 そう悟った私は勢いよく階段を駆け下りました。本当はその柱に背を向けるのも怖かったけれど、早くその場から逃げようと必死で。やっとたどり着いた1Fから連絡通路を走ってサークルの部室に飛び込んだ頃には、私の身体は冷たい汗でびっしょりと濡れていました。

 これは後から大学OBの従兄弟に聞いた話ですが、あの8号棟は5階建て、『B1~4Fまで』しか存在していないそうです。それじゃあ、踊り場から私が見た5と書かれた柱は、あのフロアは、一体何だったというのでしょう。もしもあのまま階段を上って『存在しない5F』に足を踏み入れていたら、私は一体どうなっていたのでしょうか。今でも階段を長く登っていると不意に思い出し、背筋の凍るような思いがします。

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コメント(1)
  • 少し怖い😱

    2023/07/02/12:30

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