某ダムでの肝試しで撮った動画

「何が？」

それでもＡは退屈なのか話に食いついた。

「いやな、動画撮ってんはＢやろ？人影みたいなん４人おるやん」

俺達はすぐに黙り込んでＣを見た。たぶん、アホみたいに口を開いたままあんぐりしてた。

Ｂがすぐにスマホを取り出して動画を再生させた。

さっきの人影が写りこんだシーンを一時停止して食い入るように４人が覗き込む。

画面がほとんど暗転しているため辛うじて人影だと判別できるほどで、それが４人の内の誰なのかまでは正直わからない。

「これ俺か？いやＣか？」

「Ａやない？こっちはお前やろ」

せめて顔や衣服の判別ができればと考えるが、真っ暗にぼやけてて色の違いさえできない。

「でも４人おるよな、確かに」

それも恐らくではある。人らしき影が４つ確認できるってだけで、正直人じゃなくて背景の木の一部の写り具合と言われたらそれまでだ。

それでも手足のような関節があるように見えるので人のようにも見える。

「やっべ、ちょっと怖くなってきたわ」

Ａはそう言いつつも顔が笑っていた。

「そういや、もう一個動画回しとったわ。帰りのトンネル」

「なんで忘れとんのや。はよ見ようや」

Ｂの肩を揺らしてＡが急かせる。

再生された動画Ｂがスマホを手に持ったまま提げてるのか、映像が逆さまでほとんどトンネルの壁面しか映ってなかった。そこに俺達の雑談トークと靴音が反響するだけだった。

「何やこれ、何も映してないやんけ」

「動画だけ回しとったんやけど忘れとったわ」

暫く動画の音声だけ聞き入っていると、何やら不可解な音が入り混じっているのに気付いた。

ペタペタ…。

「これ何の音？」

ペタペタ…。

俺達の靴音に紛れて規則的な音が聞こえてくる。

「足音ぽくね？」

だが俺達の足音はコツコツとかキュッキュといった物が摩擦するような音なんだが、この音はどう考えても素足のような吸い付きの音。

「何か近づいてきてね？」

Ａが小声で言う。