あの日、父さんは何を見て、なぜあのようなことをしたのだろうか?
まず父さんの話をします。
父さんは昔から水辺に近づかないようにしていたらしく、大学から付き合っていた母さんが、どんなに海やプールに行こうよと誘っても絶対にうなずかなかった、というほど徹底していたらしい。
さらに私が生まれてからは私が水辺に近づくのも不安に思っていたようだった。
遠足など学校行事で遠出する際には、しおりを確認してどこに行くのかを調べて、さらに池や川があると、安全管理について学校や施設に問い合わせるというほどの徹底ぶりであった。
そういう家に育ったので当然家族で海や川に行くことなどはなかった。
しかし私が小学校5年生の夏休み前、クラスメイトたちは海や山に家族旅行にいく計画を嬉しそうに話しているのを聞いて、どうしても羨ましくなってしまいました。
その日の家族会議は紛糾しました。
絶対に行きたい私と絶対に行かせたくない父さん。
話はずっと平行線でしまいにはガチ泣きしてしまった私。
見かねた母さんが、
・宿泊先は湖の見えるロッジ
・ただし湖にはあまり近づかず、眺めるだけにすること
・水遊びはできないのでレクリエーションは付近の美術館巡りとする
という折衷案を出した。
単に母さんの趣味の美術館巡りの口実にされたような気もしたが、私も父もこの案で妥協することにしました。
夏休みに入り、待ちに待った家族旅行の日になりました。
父さんの運転する車で出発します。
いくつかの美術館を巡りながら15時ごろにはキャンプ場に到着しました。
私たちの借りたロッジは湖から200mほど離れた位置にありました。
他のロッジと比べると明らかに湖との距離が離れているようでしたので、きっと父さんがあらかじめ指定していたのでしょう。
しかしロッジから湖は割としっかり見えたので私はまあ満足でした。
荷物を下ろしてから、父さんにもう少し近くで湖を見たいとせがむと、あまり近づくのはダメだぞ、と釘を刺しつつもしぶしぶ許してくれました。
ロッジから3人でてくてく湖に向かって歩きます。
湖のほとりまであと10mほどのところで、父さんはこの辺りで十分だろうと言って私の手を握って制止しました。
父さんの手の力が強いのと5年生なのに父親と手を繋いでいることがなんだか恥ずかしくて、父さんの手を振り解きました。
今思えば父さんの手は震えていたかもしれません。
もちろん私としてはもっと近づいて見たかったし、友人に見せるための写真も近くで撮りたかったのですが、きっと許してくれないだろうなと思い我慢することにしました。
仕方がないのでこの距離から写真を撮ったり、お絵かきセットで絵を描いたりして過ごしましたが、他の家族の子供たちがパシャパシャ水遊びしているのがどうしても見えてしまい、なんだか悲しくなってしまったのを覚えています。
ただその後、ロッジの前でBBQや花火をしてキャンプを満喫したので、悲しい気持ちはすぐに忘れてしまいました。























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