格安のホテルに泊まってて、気づいたら幽霊がいた。そして――追加料金を取られた。
俺は何も悪くないと思っている。
そのホテルは周囲のホテルが8000円を超えてるというのに、4000円弱だった。クチコミに『幽霊が出る』とか『違約金を取られる』などと多数書いてあった。
俺は幽霊なんて見たことがないし、出たところでホテルの人に言って、部屋を変えてもらえばいい。違約金だって、ルールを守らないやつが悪い――そう思っていた、その時は。
実際にホテルを訪れてみると、いまどき重い鉄の扉に丸型のドアノブがついていて、オートロックすらなかった。昭和の生き残りのようなホテルだったから、安さにも納得がいった。
その夜中、俺が寝ているとドアが激しくノックされた。なにごとかと思ってドアを開けると、ホテルマンが立っていた。
「お客様、お連れ様がいらっしゃいますよね?」
そう言われても心当たりがなかった。
俺は何かの間違いだと思ってたが、ホテルマンは真顔で何らかの確証があるようだった。
「連れなんていないから、部屋の中を見てくれよ」
俺が部屋の中を見ると――ぼんやりとした輪郭の、赤いドレスを着た女が立っていて、思わず声を上げてしまった。
ホテルマンは「お連れ様の分――違約金として1000円を頂戴いたします」となにごともないように言った。「あれは幽霊だろ」と言っても「ご予約にない方をお部屋にお招きになることは、禁止しております」と言われた。
「あの幽霊は俺と無関係だし、このホテルにもともといたんじゃないのか?」とか「むしろ割り引くべきだろ」とか色々と強く言ったが、ホテルマンは淡々と「それでしたら、警察にご相談することになりますが」と答えた。
結局、チェックアウト時に精算することにした。
納得はいかなかったが、面倒だし、払ったとしてもまだ安いし、なにより早く寝たかったからな。
しかし、部屋に幽霊がいるなら、おちおち寝ていられない。「せめて部屋を変えてくれ」とも言ったが、ホテルマンは「満室でございます」と表情を崩さなかった。
ドアを閉めたあと、部屋を見るとあの幽霊はいなくなってた――と思ったら壁に顔をつけるように立っていた。
輪郭がぼんやりしているとはいえ、俺が想像していた幽霊よりはっきり見えてた。もし触れるなら、部屋から引っ張り出して安眠できると思った。
で、背中に手を伸ばしてみたら――みごとにすり抜けて壁に手がついた。
やっぱりダメかとガッカリしていると、女の幽霊が振り向いて睨みつけてきた。
下唇を噛み、目に涙を溜めて、両腕で胸を隠すようにして。
まるで俺がむりやり胸を触ったみたいになってるが、俺の手にはなんの感覚もなかった。冤罪だろ。
隣の部屋のドアを激しくノックする音、しばらくして開く音が聞こえた。
女の幽霊は俺を恨めしそうに見て、壁を抜けて出ていった――少しして泣き声と悲鳴が聞こえてきた。
俺は何も悪くないよな?























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