ある夏の異臭騒動と怪現象
投稿者:こはる (15)
この話は1年半ほど前の夏のできごとです。
私の住んでいるアパートは、A棟とB棟があり、私はB棟に夫と二人で暮らしていました。B棟の皆さんとは面識がありましたが、A棟の方とは、誰一人面識がありませんでした。
暑い日が続いていたある日、A棟の前を通ると異臭がすることに気付きました。生ゴミのような、汗臭いような・・・何とも言えない臭い、とにかく臭かったのです。
私は何となくA棟の102号室の方が原因かなと思いました。と言うのも、B棟から敷地外に出る前にはA棟を通らなければならなかったのですが、何度か102号室の部屋の中が見えてしまったことがあったからです。カーテンが足らなかったようで、下の隙間から部屋の様子が窺えました。
もちろんじろじろ見た訳ではないですが、カーテンの隙間から見える窓際部分には、ゴミが散乱しているのが分かったのです。
きっと、102号室の方がゴミを溜め込んでいて、この暑さで臭いがキツくなってしまっているのだろう。私はそう勝手に判断しました。
ゴミを捨ててくれれば落ち着くだろう、と思っていたその異臭は、日に日に強くなり、B棟にも臭いが届くようになっていました。最初に嗅いでいた臭いとは違い、もはや何の臭いかも分からない、とにかく不快な悪臭でした。
そんなある日の晩のことです。ふと、夜中に目が覚めると、傍に誰か立っているのが分かりました。それは、白い人影で、男か女かは分かりません。ただ、何となく、見てはいけない気がしました。
「こっちに来て。」
これまた男女どちらとも言えない声で、その人影が私に話しかけてきました。私は怖くなり、布団を頭から被り、強く目を瞑りました。いつの間にか寝てしまっていたのでしょう。気付くと朝になっていました。
その日は普通に過ごしていたのですが、またその白い人影が現れました。お風呂に入っていると、これまた
男か女か分からない声で、「見つけて。」と話しかけてきたのです。私は聞こえないふりをして、すぐお風呂から上がり、その日も、頭から布団を被って就寝しました。
私は夫が怖がるかな、と思い、その一連の話は夫にはしませんでした。その代わりではないですが、朝の話題として異臭の話をしました。
「A棟の102号室の人が、ゴミ捨ててないんじゃないかと思うんだけど。」
「俺、今日休みだし、管理会社に連絡してみるわ。」
そんな会話だったと思います。
その日の夕方のことです。当時通っていたデザインスクールから帰ろうとすると、夫から着信がありました。
「驚かないできいてほしいんだけど・・・A棟の102号室の方、亡くなってたって。」
その瞬間、私は血の気が引き、鳥肌が立ちました。夫の話によると、連絡を受けた管理会社がA棟の102号室を訪ねると、中には既に腐敗の進んだ居住者の遺体があったそうです。
最近の悪臭は人の腐った臭い。それにもゾッとしましたが、腐敗の進んでうじの群がった死体。白く見えたのではないでしょうか。2日連続で、私の元にやってきたあの白い人影は、その人だったのではないか。そう思ったのです。
早く見つけてもらいたくて、私のところに来たのに、私はまるきり無視をしてしまった。恐怖と罪悪感に襲われながら、家に帰ると、B棟の前で白い人影が私を待っていました。
「見つけられなくてごめんなさい。」
心の中で、そう呟きながら、人影の前を通り過ぎました。
そんな毎日が1週間ほど続いたある日、パタリと白い人影が現れなくなりました。もしかしたら、天国へ向かったのかもしれない、私はそんなことを思ったのでした。
見つけて欲しかったのかな
それにしてももう少し早く見つかっていれば…
自分だったらトラウマになりそう
かわいそうではあるが死者に同情したらだめとも聞くよね