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不思議体験

峰さんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

迷い込んだ「抜け出せないトンネル」
短編 2021/10/04 11:59 2,801view
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娘が産まれたばかりの頃、私はとても疲弊していた。

初めての出産に、初めての育児。夫は朝早くから夜遅くまで働いており、私は実質ワンオペで子どもの世話をしていた。

娘は夜泣きが酷く、日中もおんぶや抱っこでないとお昼寝をしてくれない。

慢性的な睡眠不足だった。

だからだろうか。ある日、奇妙な体験をした。

私は車で30分ほどの実家へ帰省した帰りだった。夜の山の中の一本道を、車で走っていた。

後部座席にはチャイルドシートに乗った娘。

ちょうどお腹が空いたのか、激しく泣いていた。

実はその日、私は実家の母親と喧嘩をしてしまい、気分がとても落ち込んでいた。

きっかけは些細なものだったが、口論になり、本当は泊まるはずが飛び出して帰ってきてしまったのだ。

日頃の疲れもあり、私はとても暗い気持ちだった。

ギャン泣きする娘に、「もうちょっとでおうちに着くからねー、ごめんねー」と声をかけながら、暗い山道を運転した。

途中でトンネルに入った。

古くてボロいが、ほんの10秒ほども走れば抜ける、ごく普通のトンネルだ。

いつものように運転していたが、私はふと違和感を感じた。

なんだか、いつもよりトンネル内の照明が暗い気がする。

普段は真っ白な灯りなのに、今日はなぜかぼんやりと曇っているというか、オレンジがかった灯りなのだ。

変だなと思うことはまだあった。

トンネルが、長いのだ。

いつもならすぐに抜ける短いトンネルなのに、なぜかなかなか終わらない。

先を見ると、向こうのほうに終わりが見えるのだが、ちっとも近づいてこない。

もう30秒、いや、もっと走っている気がする。

ゾワゾワしてきた。そしてもっとおかしなことに気がついた。

さっきまでギャン泣きしていた娘が、ピタリと泣き止んでいるのだ。

娘は一度泣き出すと抱っこするまで泣き止まない。勝手に泣き止むなんてありえなかった。

「◯◯ちゃん?◯◯ちゃん?」

呼びかけるが、娘が動く気配すら感じられない。

「◯◯ちゃん、いるの?◯◯ちゃん!」

必死に叫びながら運転する。まだトンネルは終わらない。

娘が心配で胸が張り裂けそうだった。

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