私を襲った長い髪の毛

私の父がガンを患って入院していた時の出来事です。

毎日病院に通っていたのですが、父の容態は良くなることはなく、終末期を迎える患者さんたちが集う病棟に移されることになった頃の事です。

毎日のようにどこかの病室から家族の泣き声が聞こえ、最後の日を迎える。
そんな光景が当たり前の病棟でした。

私の父ももう長くはない事はわかっていたので、最後の時を穏やかに過ごそうと覚悟を決め、当時婚約中だった彼を連れ、病院に訪れていました。

父は穏やかに深い眠りについていました。
私たちはお見舞いの花束を置き、「残念だけど今日は起きないみたい」と、病院を後にすることにしたのです。

すると、エレベーターで看護師の方が「もう帰られるんですか？もしかしたら、今夜は峠かもしれません」というような事を言ってきたのです。

正直、そういった言葉を言われることは初めてではなく、何度も「危ないかもしれません」と言われていたので、慣れ始めてしまった私は「何かあったら連絡ください」と伝え、病院から少し離れた宿泊ホテルに向かいました。

彼と私は何度か使った事があるそのビジネスホテルに宿泊し、翌日また病院へ行こうと考えていました。

深夜、眠りについていた私と彼。
私は悪夢に襲われ、「苦しい・・・」と目覚めたのです。
すると目覚めた先には彼の強い眼差しが。
眠っていたはずの彼が起きて、私の方を見ていたのです。

悪夢に目覚めた瞬間、彼と目が遭い、さらに驚いた私は「なんで起きてるの？！」と言うと「髪の毛が伸び出して、苦しみ出したから起こした」と不思議な事を言うのです。

霊感が強い彼は、度々”何か”を連れてきてしまうことがあるので、もしかしたら・・・と思った最中、私の電話が鳴り、病院から「お父様の容態が・・・」と。

翌朝、父は亡くなりました。
その時に彼が見たもの、私を襲った長い髪の毛の正体が、悪い者なのか良い者なのかわかっていません。