短編
2021/08/08
01:15
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俺の場合は、風船にはあらかじめ顔が描かれていたが、その顔が誰だかわからないから詳しくは覚えていなかった。
今日もまた、妻は漫画部屋で漫画を描いている。
俺はそれを横目に寝室へと入り、ベッドに潜った。
夢を見た。
そこは、どこかの広い公園で、周りには手入れの行き届いた木々がきれいに並んで生い茂っている。
地面は一面の芝生で、左右を見渡すと大きな花壇もあって、様々な色の花が植えられている。
周りには建物なども一切見えなくて、ここからではわからないほど広い公園のようだ。
その芝生の真ん中にポツンと一つだけあるベンチに俺は座っていた。
顔を体の正面に戻すと、どこからともなく漂ってきた真っ赤な風船が目の前に浮かんでいた。
すると、自分の手になぜかマジックが握りしめられている事に気が付いた。
一旦マジックをベンチに置いて、何となく風船を手に取った。
ちょっとした悪戯心で、そのマジックで風船に妻の顔を描いてみようと思ったが、手が滑って風船がクルっと反転した。
風船には既に誰かの顔が描かれていた。
それはちょうど人の頭くらいの大きさで、まるで重さの無い生首を持っているようだった。
その描かれた似顔絵をよく見て驚いた。
「これ、俺じゃないのか…?」
そう思った瞬間、パン!と風船が割れて、その破片が返り血のように全身に降りかかった。
妻が言う事が本当なら、ここで俺は目が覚めるはずだ。
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日本男児!
スマホでは読みづらいみたいなので、改行を調整しました。
ついでに見出し画像も変更してみました。
作者より