ところがそれから半年くらいたったころにまた同僚から
「あの店、復活した。」
と聞かされた。
ああ、店舗改装とかにともなう一時的な閉店だったのか、
良かったな、
心からそう思って同僚に告げると、思いがけず同僚は
「ああ・・まあね」
みたいに言葉を濁した。
ん、なにかあるのか、と問う自分に同僚は明言しなかった。
さらに半年くらいの後に仕事が出来て、
古巣の職場に顔を出す機会に恵まれた。
当然「昼飯はあの定食屋!」と希望した。
同僚は「ああ、そうだよね。」とチョットあいまいな
受け答えをしながら一緒に店に行ってくれた。
店は小奇麗に改装されていた。
だが行列は出来ていなかった。
入店すると、あの奥様が変わらぬ笑顔で、
いや、むしろ以前より200%の笑顔で接客してくれた。
そして、旦那さんは
一言も言葉を発さずに黙々と調理をしていた。
本当にただの一言も、店員への指示も独り言も言わなかった。
店の雰囲気がガラリと変わっていた。
これでなんとなく休業から復活への裏事情は推測出来た。
肝心の定食の味は、たまたまかもしれないが、
以前ほどに美味いとは感じなかった。
店を出た後、同僚にとりあえずは
「あいかわらず美味いね」と言ったのだが同僚は、
「うん、でも最近は以前ほどに通っていなんだよね」
と言い、そこで会話は途切れた。
今でも考えてしまう。
再訪した定食屋で美味いと感じなかったのはなぜだろうか、と。
もしも旦那さんのあの悪口雑言が隠し味だったとしたならば
そう感じていた自分は最低だな、と。
だが、同僚をはじめ近所の皆の足が遠のき、
行列が出来なくなっていたこととかも考えると、
世の中って綺麗ごとでは成り立たない怖い世界だな、と
思ってしまうのだ。
ただ奥様の笑顔が200%になっていたことが救いだな、と。
主人の体調が悪いのかな?
バイトの女の子は、どうなんだろ?