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妖怪・風習・伝奇

藤野さんによる妖怪・風習・伝奇にまつわる怖い話の投稿です

事件記録:行方不明事件について
長編 2021/05/06 14:41 48,110view
6

 え?

(カタン、という音)

 し、下から。

(カタン、という音)

 なんで……。

(衣服が擦れる音)
(カタン、という音)
(硬い物同士がぶつかるようなカタカタという音)

 え……っ。

(ここで激しい雑音が入り、すぐに蝉の鳴き声だけが聞こえる)

(蝉の鳴き声)
(録音時間を過ぎて切れる)

資料4 (元凶と思われる)

 かつてM市のとある山には、色欲に溺れ女を攫いついには食べた男がいた。
 仕事もせず金もなくなり、生きる為に抱いた女だけでなく子供や男も攫って食べた。
 そして山に近づく者を全て食べてしまうその男は、鬼と呼ばれるようになる。
 だが彼は死んだ。
 なぜ死んだのかは誰も分からないが、男はいつのまにか死んでいた。
 なぜ男が死んだのを誰も分からなかったかと言うと、男が死んでからも山に近づいた人が皆いなくなっていたのだ。
 男は鬼と化し死んでもなお人を攫い続けていた。

 それに気づいた一部の人々は、男を神として山に祀ろうと考えた。祀ると言っても、それは表向きで、本当は鬼を閉じ込めようとしていたのだ。
 攫われないように必ず単独行動を避け、山の土の中に和室を作った。
 もとの家にあったものを全てそこに入れ、〝鬼〟を誘い込む為村にやってきた六部の女を部屋に閉じ込めた。
 そしてその上に神社を作り、表向きは鬼を祀って鎮めているということにする。
 結果は、成功だった。
 山に近づいても攫われる者はいなくなった。
 しかし、数十年後、少女がいなくなる。
 鬼のことを覚えていた数少ない村人達は、自らもう朽ちた神社を壊し、そこに家を建てさせた。
 そこに人が住めば、犠牲になるのはその家の住民だけだと考えたのだろう。
 村の年寄りはそのことを絶対に他言せず、若い村人達はそのことを知らないので、次第に山の神隠しは忘れられていった。
 そんな中一部の家では、自分の家系を守るため家族にだけ語り継いだという。

8/9
コメント(6)
  • 面白かったです
    もう少し歴史的背景や不快描写を掘り下げられたら、「みさき」「けりよ」に並ぶ名作になるかもしれないですね

    2021/05/06/20:09
  • やっぱ「みさき」思い出すよねえ
    思いのほか録音の文字起こしが臨場感あって良かった

    2021/05/08/17:05
  • 面白かったです。読んでいて気持ち悪くなるぐらいにはリアルな描写だったし、筆者はこれが実話でないにしても似たような経験がある?

    2021/05/10/00:43
  • 不思議と引き込まれていった。主の文才が凄すぎる。ハッとするなぁ

    2023/06/01/10:44
  • PVの読書バージョン?

    2023/06/06/19:44
  • 幽霊の鬼を、物理的に閉じ込められるの?
    単独行動して攫われた人について、どうして村人は鬼をのせいだと分かったんやろ。
    地下部屋から女が居なくなったと村人はなぜ分かるの?
    音声部分はリアリティあったけど、解説部分はご都合ファンタジーでよく分からなかった

    2023/10/17/12:12

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