その土地
投稿者:藤野 (11)
タピオカ、バナナジュース、唐揚げ。これらは最近流行った食べ物だ。もっと遡れば、ナタデココとかティラミスとかにもなる。
これらの共通点――それは、急激に店が増加して、ブームが去るにつれ店が潰れていくことじゃないだろうか。
そして、この世の中には「入れ替わりが激しい土地」というものがある。要はそういう流行りの店の、短期間の入れ替わりで使われているような場所だ。
そして、俺が今来ている場所はまさにその聖地。
名前は言えないので、H区とだけ表記しておこう。
そこは現在は唐揚げ屋をやっている。もちろんその前はバナナジュースの専門店だったし、その前はタピオカ屋だった。そこまで入れ替わりが激しいと、トラブルも起こるらしい……。
この唐揚げ屋は、商品に長い髪の毛が入っていることで有名だ。その店は金髪の若い男が営業しているので、そんな長い髪が混入する訳がなかった。それを不気味がった人々は、その店に一切寄り付かなくなる。そんなんで経営がままならない男は、もうすぐ出て行くそうだ。
俺はそんな不思議な場所を一目見たいと、わざわざH区にまでやって来た。店の外装は案外普通である。唐揚げ屋は左右の大きな店に密着して挟まれるので、窮屈そうな形をしていた。
俺が客だと分かると、金髪の男は笑う。愛想はいいようだ。
俺は普通の唐揚げを購入した。紙の容器にいくつか唐揚げが入っている。少々値は張ったが、味はかなりのものだった。あの噂さえ無ければ、客はついていただろうに……。俺は男を気の毒に思った。
そして最後のひとつを食べた時……。
ながーい、一本の黒髪が容器の底に張り付いていた。
「へえ、噂通りなんですね」
俺は男に話しかける。
「お客さん、もしや噂を知っていて買ったんですか? 物好きですね」
金髪の男は驚いた顔をしていた。今まで散々だったのだろう。
「もうすぐ閉店されるんでしょう。オカルト好きとしてこれは見逃せなかったので、北海道からすっ飛んできましたよ」
「北海道からですか、遠いのにご苦労様です。いやあ、お客さんが皆あなたみたいな人だったら、もっと栄えてたんだろうなあ」
「言い過ぎですよ……。それより、どうして髪の毛が混入するんですかね? やっぱり心霊的なものなんでしょうか」
金髪の男は苦笑いをして頭を掻くと、こう言った。
「実はですね、あまりにも理不尽でしたから、この辺のことを調べたんですよ。ああ、もちろん最初は防犯カメラを付けたりして、犯人がいるんじゃないかと疑ってましたけど……」
一息ついて、
「そしたら、ここの前はバナナジュースの専門店だったんですけど……その前がタピオカジュースの専門店、その前はスムージーのジュース店で……。遡ると、分かった限りで一番最初にあったのは老舗の和菓子屋だったんです。そしたらですよ」
客がいないからなのか、男は饒舌になって話した。
「その店で、自殺があったらしいんです……。自殺したのはその店の二階に住む女だったらしくて」
「無関係の人が人の店で自殺を?」
「ああすみません、一階の和菓子屋は老夫婦が経営していて、二階にその娘と住んでいたんですよ。ところが、娘は自殺。近隣住民の噂によると働いてないことを責められたとかなんとか……。俺も反省しましたよ。入れ替わりが激しい土地だとこういうことが伝わりませんからね」
「でもそれじゃあ、この前に入っていた店は全部無事だったんですか?」
「そうでもないらしいですよ。前ここで店をやってたのが俺の友達でしてね。バナナジュースに髪の毛が混入することはなかったものの、掃除の時に長い髪の毛が沢山出てくるのが気味悪かったって……」
「それで……じゃあ、店長。ここのはどうして混入を?」
男は笑う。
「ちょうど、唐揚げを揚げる場所の真上で首吊りをしてたらしいんです。それなら、ぶらんぶらんして髪の毛が落ちてくるのも普通でしょう。……それよりお客さん、うちの唐揚げどうでした?」
俺は言葉に詰まる。どうしてこのタイミングで聞くのか分からなかった。
「お、美味しかったですよ」
人間の足を一緒に揚げたとしても唐揚げが美味しくなるとは思えないけど
流行り物って直ぐ廃るもんだよね‼️
三角公園のイメージで読ませて戴きました。
当分唐揚げ喰われへんやん!
なまものを吊っておくと、下に体液やら何かの絞り汁がたまるから,,,,,
それが隠し味ってこと?
入れ替わりの激しい場所には、何かしらの曰くがあるのかもしれませんね
うちの近くにもそういう場所があります…
題名はその土地、より、その位置、の方がいいかな。
金髪店長の調査力半端ねえなw
心霊が出るような劇場とかの方が箔がついて人が来るようになるって話の亜種かな
出汁。るーしぃが、でーるぅ〜