「……なにも、こんなに若くして逝かなくても……」
「ハヤテくん、嘘だと言ってよ……」
「ハヤテくーん!」という甲高い歓声は、押し殺した啜り泣きと、遺族やファンの悲痛な叫び声だったのだ。
熱狂的に振り回されていた色鮮やかなペンライト。それは、ファンたちが手にした真っ白な和蝋燭の炎や細く煙を上げる無数の線香の束だった。青白い煙が、足元から立ち込め、あたりを異様な匂いで満たしている。
手渡されていたはずの花束とプレゼント。
足元を見下ろせば、そこに置かれていたのは色とりどりのお祝いなどではない。白い菊の花輪、折鶴、そして彼の遺影の前に供えられた、冷たくなった「供物」の数々だった。
(なんなんだよ、これ……何が起きているんだ!?)
ハヤテはパニックになり、自分の胸に手を当てた。
静寂。
そこには、あるはずの鼓動がなかった。激しく打ち震えていたはずの心臓は、指先ひとつ分も動いていない。
記憶の断片が、濁流のように脳裏へ雪崩れ込んでくる。
(そうだ……俺は確か、楽屋で突然胸が苦しくなって――)
出番直前、舞台裏の暗がり。胸を絞めつけられるような、猛烈な激痛。視界が急速に狭まり、膝から崩れ落ちた感覚。救急隊員の叫び声と、けたたましく鳴り響く心電図のフラット音——。
自分はもう、死んでいたのだ。
舞台に立つことも、歌うことも、二度とできないまま。
「ハヤテくん……ありがとう……ずっと忘れないからね……」
目の前で、ミサキが画面を強く抱きしめ、ぽろぽろと涙を流している。
周りのファンたちも、線香の煙と蝋燭の光の中で、黒い服を身に纏い、ただひたすらに彼の死を悼み、泣き叫んでいた。
ハヤテは、もう声の出ない口を開き、呆然とその場に立ち尽くす。
ふと振り返ると、楽屋口だと思っていた重い扉の向こうから、一台の黒い霊柩車が静かに発車しようとしていた。
クラクションの長くて暗い音が、夜の空気に悲しく響き渡る。
熱狂のライブ会場だと思っていた場所は、自分を乗せた棺が送り出される、あまりにも残酷で美しい「出棺」の場だったのだ。
大勢の人々が涙を流しながらそれを見送っていた。そう……これこそが、彼をあの世へと送り出す、人生最後の「出待ち」だったのだ。























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