眩いフラッシュと、割れんばかりの歓声。
木製の扉が押し開けられ、今をときめくアイドル、一ノ瀬ハヤテ(仮名)は、楽屋口から外へ出た。
「ハヤテくーん! こっち向いてー!」
「ハヤテくん、大好きです! これ、受け取ってください!」
楽屋口を出た途端、押し寄せたファンたちの熱気で視界が埋め尽くされる。
ハヤテは、完璧なアイドルの笑みを顔に貼り付けた。今月リリースの新曲はミリオンセラーを達成し、ライブツアーのチケットは数秒で即完。今、自分は間違いなく芸能界の頂点に立っている。その高揚感が、胸の奥でドクンドクンと、どこか重く激しく脈打っていた。
色とりどりのペンライトが暗闇の中に揺れ、耳をつんざくような歓声が響く。次々と差し出される色鮮やかな花束、美しいラッピングが施されたプレゼントの数々。歓喜に満ちたその光景に、ハヤテは満足げな笑みを浮かべ、ひとつひとつを丁寧に受け取っていく。
(……なんだか、やけに煙たいな)
鼻をつく独特の匂い。ファンがつける香水の匂いだろうか。どこか甘く、香木を焚いたような、いや——焦げ臭いような匂いが満ちていた。
「ハヤテさん!」
不意に、ひとりの若い女性が前に進み出てきた。控えめだが、まっすぐな瞳。
「私、ミサキって言います。あの……一枚だけ、一緒に写真をお願いします!」
「ミサキさんね。いいよ、いつも応援ありがとう」
ハヤテは快く頷き、彼女の隣に並んだ。カメラを向けられ、いつものように指でハートを作り、カメラ目線で最高のスマイルを作る。
パシャリ。
電子シャッター音が響いた。ミサキはスマートフォンの画面を確認すると、ふっと息を呑み、涙をぽろぽろと零し始めた。
「……ハヤテさん。ありがとう…安らかに、ね……」
「え?」
安らかに? 妙な言い回しだな、とハヤテは首をかしげた。「見せてごらん、上手く撮れなかった?」と覗き込む。
画面に映っていたのは、寂しげに佇むミサキの隣で、目を閉じ、まるで眠っているかのように穏やかな死相を浮かべたハヤテ自身の姿だった。ポーズをとって微笑んでいたはずの自分の顔は、青白く、血の気を完全に失っている。
「……ミサキさん?」
ハヤテは戸惑い、彼女の肩に手を置こうとした。だが、彼の伸ばした手は、すうっと彼女の体をすり抜け、空を切った。
冷たい手応えすら、ない。
「は……?」
ハヤテが目を見開いたその瞬間、周囲の「音」と「光」が、歪みながら一変した。























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