隣でごそごそしていたR、を見る。
右手にさっきまで頭から生えていた髪の毛を持って、ツルツルとした頭を夕暮れの強烈な赤色に照らされたRは、ただ優しく笑って、
「もう髪の毛、生えてこないよ。これでバランスが取れた」
と言ったRとはその後も交流が続くものだと思ったけれど、中学に上がり、高校生になって僕に彼女みたいなものができ始めた頃から、年賀状もこなくなった。
そこから十何年?
今、何をしているのだろう。
そして、教えてほしい。
今、僕がしてしまったことを。
僕はこの理不尽が無理だった。会社や上司のことも含め人に紛れて生きていると言うことそれ自体が地獄だったけれど。
そんな日が続いてるってことはRの言うバランスは取れていると言うことだ。
もうどうしようもなくなって、死ぬしかないってそれしか思いつかなくて毎日毎日バランスの取れた絶望を味わっている時にふと、このRのことを思い出して動物園に行ったんだ。
そしたら分かった。
僕の小指と今何してるかわからないけどお子さんができてとても幸せそうなRがつながっていることを。バランスが保たれていることを。
なぜ小指なのかはわからないしどうでもいいけど、なぜRに子供ができてることなんてわかるのかどうでもいいけど、バランスってそう言うことだから、僕は小指を動物園のトイレで隠れて潰した。石で。
そうして、ネクタイでぐるぐる巻きにした左手を支えながらトイレを出たら。
夕闇の中、ぐちゃぐちゃになったRが、こっちを見て笑っていた、気がした。
バランスは保たれた。

























※コメントは承認制のため反映まで時間がかかる場合があります。