「うわぁぁぁぁっ!?」
ボクは叫びながら目を開けた。
やつを払いのけようと必死で暴れた。
「大丈夫ですよ!落ち着いてください!!もう大丈夫ですよ!!」
女性がボクの体を必死に抑えている。
さっきまでとは違う空間で突然目覚め、若干パニックだが、
あの化け物がもういなくなっているのを確認した。
白っぽい部屋、女性はナース服を着ている。
自分はベッドにおり、体からチューブが何本も出ていた。
「ここは病院です。落ち着いてください」
せわしくなく動く病院スタッフ。
そうか・・・病院か・・・ボクは助かったんだ・・・
やっと状況が呑み込めてきた。
きっと旅館の従業員たちがやって来て、大ケガをしたボクを発見して救急車を呼んでくれたに違いない。・・・そう思った。
少しして落ち着いた頃、女医がボクのところに訪ねてきた。
「本当に、奇跡的ですよ、あなた。ずいぶん長い間昏睡状態で・・・私たちもあきらめかけていたんですよ」
「ありがとうございます・・・あの、ボク、どのくらい眠っていたんでしょう?」
「10年ですよ。・・・本当に、よく、お戻りになられました」
その瞬間、頭を殴られたようにめまいがした。
女医の顔が、旅館の女将に似ているような気がした。
ボクの体にはもう、足が付いていなかった。
女医さんからの説明では、ボクは旅館にさえ行っていなかったようだ。
そこへいく途中で峠道の崖から転落したらしいのだ。
じゃあ、あの旅館での出来事はすべて夢だったのか・・・?
看護師がボクのところに来た。
「親御さんには連絡しましたので、明日の朝には来られるそうですよ」
「そうですか、ありがとうございます」
「じゃあ消灯時間ですので、お部屋の電気消しますね。ゆっくりお休みください」
そう言って部屋の電気が消され、看護師さんは出て行った。
ぜんぜん眠くない。10年も眠っていたのだから。



























Mameです。
こちらの作品は、2024年に書いたショート怪談の「幽霊旅館」を
長編に作り替えてみた作品です。
やっぱり長いと旅情とかワンクッション入れられて、読んでる人の精神をゆるめたり緊張させたりする余裕ができていいですよね。