と声をかけました。
しかし、おばあさんは怯えた様子でアルバムを閉じました。
その日の訪問を終え、友人は事務所へ戻りました。
少し気になったので、休憩中に同僚へその話をしたそうです。
すると同僚は、
「ああ、あるよ。そういうの」
と特に驚く様子もなく答えました。
「認知症が進むと、家族の顔とか関係が分からなくなる人もいるからね。自分の子どもを他人だと思ったり、その逆もあるし」
友人も、
「やっぱりそうですよね」
と納得しかけました。
ところが。
その同僚が、急に黙ったそうです。
何かを思い出そうとするように眉間にしわを寄せていました。
「……待って」
「何ですか?」
「その人って、○○さんだよね?」
友人が頷くと、同僚はしばらく考えてから言いました。
「俺、その人が最初に介護サービス申し込みに来たとき担当したんだよ」
「はい」
「確か……息子さんが一緒だった気がする」
友人は、その言葉の意味がすぐには分からなかったそうです。
同僚は続けました。
「いや、記憶違いかもしれないけどさ」
そう前置きしたあと、少し声を落として言いました。
「あの家、子どもって息子さん一人じゃなかったっけ」
友人は、何も言えませんでした。
頭の中に、あの写真が浮かんだそうです。
若い夫婦に挟まれ、幸せそうに笑っていたあの小さな女の子。
もし本当に、あの家に子どもが一人しかいなかったのなら。
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