小さくそう呟いたそうです。
友人は聞き取れず、
「どうしました?」
と聞きました。
おばあさんは写真をじっと見つめています。
先ほどまでの笑顔は消えていました。
「あれ……?」
もう一度。
今度は少し大きな声でした。
「あれ……? あれ……?」
その表情が、だんだん険しくなっていきました。
友人は認知症の症状だろうと思い、
「娘さんですよね?」
と声をかけました。
すると、おばあさんは突然、友人の腕を掴みました。
思った以上に強い力だったそうです。
「違う」
友人は驚いて、おばあさんの顔を見ました。
「これ、娘じゃない」
声が震えていました。
「え?」
「娘じゃない。うちの子じゃない」
さっきまで自分で「娘」と言っていたにもかかわらず、おばあさんは何度も首を振りました。
そして写真に写っている女の子を指差しながら、
「この子、誰?」
と言ったそうです。
友人は何も答えられませんでした。
認知症で家族の記憶が混乱することはある。
そう自分に言い聞かせながら、
「大丈夫ですよ」
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