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焦慮バッタさんによるにまつわる怖い話の投稿です

遠い朝
長編 2026/09/19 00:38 29view

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朝の凍えが、草原と疎林が入り混じった野営地で眠る少年兵を幸せな夢から引きずり出した。
冷え冷えとした朝の空気を吸い込んだ瞬間から、先ほどまで温もりで満たされていた己の内部全てが、兵士にふさわしい冷徹さにじんわりと置換されていく。
どこかの少女の、奇妙な、それでいて和やかな夢を見るようになるまでは、このような感覚とは無縁だった。
どこの誰がどのような大義で始めたかも分からない争いの前線で銃を構えるために自分は存在する。
そこに生理的な快・不快を超越した感情が介在する余地はない。
自分が敵の砲弾で死ぬ。
働きアリが踏まれて死ぬ。
生きている限りは一つの駒として前線を張り、支給されたビスケットを食べ、交代の指示で眠る。
働きアリが死の恐怖に怯えることがないように、かれもまた、自身の宿命に微塵の疑念も抱かなかった。
それなのに。
冷たい空気に混じった、草原地帯に蔓延る朝露からの微小な水の粒子が鼻腔を微かに刺激し、それは血の鉄臭さにも似た死の匂いとして彼の行き先を暗示しているかのようであった。
微睡みと凍えと、それから暖かな余韻と、それが現実には成しえない失望。

それらが全身のあらゆる部分を次々に上書きしていく感覚に悶えていた、その時だった。
「繧??縺ャ繧ゅ∴縺後◆」
警戒音とほぼ同時に怒声が鳴り響く。
かれは一瞬蹲った後に飛び起きて、右目だけを庇うように細めながら、銃を手に取って新たな弾倉を装填した。

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学校の授業中、友達との会話中、下校途中、夕食時・・・。
何をしている時にも、頭の片隅では夢に見る少年兵のことを考えている。
そんな状況が続いていた。
今までの香奈は、金銭的にも精神的にも恵まれた環境で育ってきた。
日々の生活は、少し気に入らないことはあれど、幸せで満たされていて、周りの人間も皆一緒なのだと信じて疑わなかった。
この世界で誰かが自殺したという出来事を四角い画面越しに知っても、それは香奈にとっては遠いお伽話の出来事でしかなかった。
それなのに。
「香奈、そんなところでぼーっとしてどうしたの?」

「え?いや、なんでもない」
「ちょっと人参とカレールーを買い忘れちゃったから買ってきてくれる?おつりはお小遣いにしていいから。」
「分かった。行ってくる」
「あれ?今日はやけに素直だね」
住宅街の中に入り組んだ細い道を抜けると、やや広い一本道へと出た。
ふと、頭上を見上げる。
夕方4時半の淡い青色が広がる真上の空から次第に視界を前方に移していく。
そこには灰色の雲が局所的に広がっていて、その下にある団地群は厭世的な翳りを帯びながら佇んでいた。
道路沿いにあるスーパーに入り、人参とカレールーを手で持ってレジへ並ぶ。
「袋はどうしますか?」
「大丈夫です」
カウンターの隅に置かれている、発展途上国の子供たちへの募金箱が目に入った。
夢の中の少年兵が、どうすることもできない絶望に慟哭しながら暮らしている人間が、もしも現実にもいるのだとすれば・・・
香奈は、おつりの148円をそっと募金箱に滑り込ませた。

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