「その道はかなり細いから気をつけて。それと」
「それと?」
「手を振ってはいけないよ。」
「手を?、そ、そうですか。ご丁寧にありがとうございます。」
「お気をつけて。」
手を振ってはいけないという意味がわからなかったが、何かに気を取られて事故を起こさないように、などと勝手に解釈して車を動かした。
しばらく走ってふとドアミラーを見ると、いつの間にかおじさんの姿は見えなくなっていた。
少しばかり曲がりくねった道路から見える景色の遠くの方には、斜面を覆いつくすようにコンクリートの防護壁が印象深かった。
車を進めると、10数件あるうちの1軒の民家の玄関先に5歳くらいの女の子の姿があった。
徐々に近づいていくと、女の子はオープンカーが珍しいのか、無表情ではあるがこちらに手を振ってきた。
車が女の子の真横あたりに来てもこちらを見つめたまま手を振っているから、反射的に手を振って応えた。
その奥には3歳くらいの男の子がいて、その子もこちらを目で追いかけて手を振ってきたので、また手を振って返した。
段々と遠ざかっていくと、子供たちはその場から動かずに首だけを動かして目で追いかけて見ていた。
(なんだか妙な子供だな…)
そんなことを思いながら道を進んでいくと、たくさんあったはずの民家が途切れ、道路の左側にはビュー機能で見たお寺があった。
しかし、それが少し妙だった。
お寺の建屋は確かにあるのだが、いかにも古く手入れがされてないのは明らかで、植木の枝も雑草も生え放題、見るからに廃墟と言っていい。
(ビュー機能ではきれいな建物のはずだったが…数年でここまで朽ちるものなのか…?)
ビュー機能は数年おきに撮影が更新されるが、人通りの少ないこの道路は更新がされなかったのか、かなり前の画像だったのだろう。
その向かい側、道路の右側を見ると広い駐車場があり、ここも雑草が生え放題だった。
よく見ると「〇〇幼稚園駐車場」と書かれた看板があり、その奥には大きな2階建ての園舎があった。
しかし、その園舎も長い事使われなかった様子が明らかで、どうやらかなり前に閉園したようだ。
お寺が幼稚園を経営しているというのはよくある話で、何らかの原因でお寺も幼稚園も廃業してしまったのだろう。
さらにゆっくり進んでいくと、舗装されているのかどうかさえ怪しい道路は徐々に狭くなっていき、車がやっと通れるほどの幅しかなかった。
ここは道路の左右から多くの木々があって、伸びた枝先が道路の方へ伸びてきているから、まるで森の中のトンネルを通っているかのようだった。
森のトンネルを抜けると、左側に広い空き地のような場所があり、その奥には小さな公衆トイレがあった。
(なぜこんなところにトイレが?)
そう思って周りをよく見ると、「この先行き止まり」と小さな立て看板が設置してあった。
そこは人が通れるようにはなっているが、車は通れないほどの幅に整備してある何かの入り口だった。
その先に何があるのか、好奇心に駆られて車から降りて入り口から入ってみた。
























※コメントは承認制のため反映まで時間がかかる場合があります。