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妖怪・風習・伝奇

礎吽亭雁鵜さんによる妖怪・風習・伝奇にまつわる怖い話の投稿です

有砂橋事件・事故ファイル3 T公園内薬物混入食品販売事件
長編 2026/09/05 21:36 68view

しかしある日T公園に変質者がいると通報があった。
警察官が行くとT公園の池の中に裸の男が浸かっているのを発見した。
警察官の話によるとその男は焦点があっておらず、10月だというのに男は池の中でとてもくつろいでいるように見えたらしい。
池の中の男に警察官が声をかけるが反応がない。仕方がないので警察官も池の中に足を踏み入れて男を引き上げようと触ると、その瞬間男は我に帰ったように「冷たい!」と叫んだそうだ。
とりあえず池から男を出したが男はさっきまでと打って変わってぶるぶる震えて寒そうにしていたそうだ。
池のすぐ横に男の服が丁寧に畳んで置いてあったので、まずはそれを着させてから事情聴取することになった。

男は介護用具を扱う業者で山向こうの老人ホームに商品を納入した帰りにこの公園で昼休憩を取りに来たそうだ。
持ってきた弁当を食べたことまでは覚えており、実際に半分ほど食べた弁当がベンチに置かれていた。
だがその先の記憶がはっきりしないらしく、男はなぜかわからないがいつのまにか自分の家の風呂に浸かっていると思い込んでいたと言い張った。

ところでこういう訳のわからない行動をした人間がいた場合俺たちが最初に何を疑うと思う?」

「え?うーん、たぬきに化かされたとか?」
「違う。薬物だよ。幻覚や錯乱はなんらかの薬物によって引き起こされている可能性が高い。
そこでその男性を検査したところわずかながら幻覚性の症状をもつキノコの成分が検出された。ただこのキノコの成分は特に規制されていないし、キノコもその辺りの山で生えている特に珍しいものでもない、もちろん食べたりしても特に罪になるようなものではなかった。
しかしその男性にそのようなキノコを食べたかを聞いたがそもそもキノコは苦手で普段から食べないとのことだった。
取り調べが行き詰まりかけた時、男性がふと弁当を食べる前のことを思い出した。
曰く、弁当を食べようとしたとき公園の隅におでんの屋台が来ていることに気づき、冷えた弁当だけでは寂しいと思い数種購入して食べたのだそうだ。
店の屋号などは記憶していないが店員の相貌は思い出せたらしく、妙に吊り目で茶髪の若い男性だったそうだ。
この発言から事件は単なる公序良俗違反ではなく何者かによる意図的な薬物混入事件までも視野に入れて捜査されるようになった。
男性も前科などはなく調べる限り真っ当に生きてきたために今回の件は厳重注意にとどめられ、捜査はその謎の屋台に主眼が置かれた。

しかしどんなに聞き取りをしてもそのような屋台の目撃情報がまったく出てこず捜査に進展は見られなかった。

それにも関わらずそうこうしているうちに次々と公園の池の中で茫然自失としている者が現れ、約1年で10人を数えるようになった。
彼らは職業、性別、年齢などに共通点はないが、皆なんらかの理由で自ら公園を訪れたこと、検査をすると例のキノコの成分が検出されたことが共通していた。

また取り調べの中でキノコを食べたかを聞いても誰もそのようなものは食べていないと答えた。
一方で何かを食べたかをよく思い出させるとやはり屋台のような店で何かを買ったことを思い出せた。
彼らのうちの数人は店員の顔も覚えておりこれまた一様に吊り目で茶髪であったと報告している。

犯人と思われる屋台の目的がわからないため様々な憶測が捜査チーム内で飛び交ったが核心をつく仮説はなかった。
またその後も屋台については一切の痕跡を見つけることができなかった。屋台なら必ずなんらかの車輪が付いているはずだが轍の跡すら見つけられなかった。

しばらく捜査は続いたがこの公園の悪い噂が流れ始めて利用者が元々少なかったのがさらに減ってしまった。
市としても問題のある公園を放置はできないということで結局その公園は閉鎖されることになってしまった。

公園が閉鎖されてしばらく経った頃、警官が巡回中に公園の裏手の山に打ち捨てられた屋台の車を発見した。
とうとう手掛かりかと色めきたったがその屋台の車は長年風雨に晒されたようにボロボロに朽ち果てていてまともに動かすことも出来なさそうであったため不法投棄の類とされ回収すらされなかった。

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