「元気ならいい。」
気づけば、ほとんど同じ言葉だった。
「元気ならいい。」
そればかりだった。
父は何も求めていなかった。
説教もしていない。
文句も言っていない。
ただ私を気にかけていた。
それだけだった。
一番最後の下書きの日付を見る。
亡くなる三日前だった。
私は大粒の涙を何滴も流しながら、濡れた画面をタップした。
「今度こそ電話してみようと思う。」
「声が聞きたい。」
「何を話せばいいか分からないけど。」
「とりあえず元気かって聞けばいいか。」
そこで終わっていた。
送信ボタンは押されていなかった。
私はスマートフォンを抱えた。
涙が止まらなかった。
たった一回。
たった一回でよかった。
「元気だよ」
そう返すだけでよかった。
忙しくても三秒で済んだ。
なのにしなかった。
あとで。
今度。
そのうち。
そうやって先延ばしにした。
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