そもそも古来よりこの町(当時は村)にいる守り神と言われているものは守り神のような善良なものではなく人に害を与える悪神や悪霊のような存在だった。
様々な方法でそれを鎮めるまたは封印しようと試みたがどれもうまくいかなかった。だがある時とある高名な霊能師が村に現れ鎮めることができると言い出した。
その方法は当時村で迫害されていたT家の先祖の体をその悪神の住処として提供するというものだった。新しい住処を用意するから今の住処である村は人間に自由に使わせてくれるように霊能師は悪神と交渉し契約が交わされた。
村の人間はTの一族に1人差し出せば迫害をやめることを約束し当時のT家の次男が人柱に選ばれた。
詳しい方法までは教えてくれなかったが儀式を行うことで悪神はその次男の体に住み着くことなった。
これで村の人たちは安心し村を発展させていくことができた、またT家には村への貢献ということで過去の罪(どういう罪かは不明)をなかったことにし、むしろ手厚く援助の手を差し伸べた。
だが時が流れその次男も亡くなって数年が経った頃、ささいなことからまたT家への迫害が行われるようになった(K君の考えでは悪神を宿した一族というのも理由だったのだろうとのこと)。
するとたちまちT家への迫害を行った村の有力者一族がことごとく祟られ死んでいった。
そう、悪神は次男からその子供へと受け継がれていたのだった。
霊能師は次男の体に悪神を移した後、T家の一族に次男が亡くなった後それを放置すると悪神がどうなるか検討もつかないので悪神を親から子へと受け継いでいく儀式を伝えていた。またもし将来また迫害されるようなときは交渉の材料にしなさいと助言し霊能師は去っていった。
初めこそT家の悪神を宿した者を迫害した者が祟られるというものであったがT家が悪神の継承を重ねるごとに、騙して資産を奪った者、求婚を断った者、ないがしろな扱いをした者とどんどん祟られるハードルが下がっていき、現在ではその者に対して不親切という程度でも祟りに合うケースがあるということであった。
「つまりOはK君の中にいる悪神の祟りを受けているということで、それに関わった自分も危ないのではないか?」と恐怖混じりに聞くと、
「いや、僕の中にまだそれはいないんだ、今はまだ父がそれの住処になってる」
「じゃあなぜOは祟られているんだ?祟りは悪神の住処になっている人に何かした時に起こるんじゃないのか?」
「逆に聞くけど君はこれから引っ越す新築をめちゃくちゃに傷つけられて平気でいられる?」
・・・・・何も言い返せなかった。
「でも君は直接僕を殴ったりしてないから多分大丈夫だよ、でもO君は・・・だめかもしれない 様子を聞く限りあれがかなり怒っているから」
「Oは『んしゃわもんそこのたり』って聞こえるって言ってたけどこれはどう言う意味かわかる?」
「んー、絶対とは言い切れないけど『お前は私の物を傷つけた』って怒ってるんだと思う。僕の体は僕のものではなくあれの物だから・・・」
K君はまた怒ったような悲しいような顔をしていた。
翌日以降もOは学校に来なかった。K君から祟りについて聞かされていたので様子を見にいくことすら憚られていた。あれにOと自分に関係があると思われるんじゃないかとビビっていた。
しかしある日先生からOが急遽転校したと連絡があった。本当に急な引っ越しらしく先生すら次の引っ越し先を把握できていないとのことだった。
この村から離れることで祟りから逃れようとしたのかなとか考えながらなんとなくOの家に寄ってみて唖然とした。
Oの家は完全に焼け落ちており柱1本残っていなかった。
火事の現場を他に見たことはないのでわからないけどこんなに綺麗に焼けるものなのだろうか?
そもそも救急車のサイレンなども聞いていない。
そしてこんな大きな火事が起こっているのになんで誰からもこの話題を聞かないんだ?
ふとK君の「T家に不親切な人すら祟る」という言葉を思い出す。
そうか、悪神は町の人全員の心の中に巣食っているのか・・・。


























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