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ヒトコワ

礎吽亭雁鵜さんによるヒトコワにまつわる怖い話の投稿です

生活保護と村の因習
長編 2026/08/14 19:44 72view

半ば打ち切られる形で話は終わってしまいました。
釈然とはしなかったものの新人であったA子さんはそれ以上この件を聞くのは良くないことなのだろうと感じ書類仕事に戻りました。

黙々と書類の処理を進めていると定時になったのでタイムカードを切り、またデスクに戻ります。ここからはサービス残業です。福祉関係者にこそ福祉支援が必要だと常々思います。

引き続き書類の山に取り組みしばらくしてそろそろ終わるぞというところで同僚のB美さんが晩御飯に誘ってくれました。
いい加減疲れていたので残りは明日朝イチ処理することにしてこの日は退勤してしまいました。

職場から車で10分ほどのうどん屋さんに入り、席に着くとB美さんが切り出しました。
「今日○○村について話してたでしょう。あの村は少し頭おかしいところあるからあまり村について聞いて回ったりしないほうがいいよ。
まあそうは言っても気になるだろうし、知らずに地雷踏んでも仕事に差し障るだろうから私が知ってる範囲で教えてあげるよー。それに私あの村出身だしね。」
「え?B美さん○○村のご出身だったんですね。」
「そうそう。ただあの村はちょっとアレだから大人になってから街に出て今はできるだけ関わらないようにはしてるんだけどね。」
「そのー、アレってのはどういうことなんでしょうか?」

「引くくらい狂った風習が昔からあるのよ。
あの村では産まれてきた女の子の足を捻るの。そうするとその子はお淑やかで女性らしく嫁の貰い手に困らないって言われてるの。」
「本当ですか?」
「本当本当。まあ最近ではやらない家も増えてきてるし、おまじないのノリで形式的に捻る真似をして子供の成長を願うみたいにしてるとこもあるみたいなんだけど、今も家長や姑さんが本気の力で捻ってうまく治らずに障がいが残る女の子もまだまだ多いみたい。実は私も生まれた時に軽く足やられてて、今も後遺症あるんだよね。」
そう言ってB美さんはちらっと足をA子さんに見せてくれましたが素人目にはどこが悪いかはよくわかりませんでした。

「いやー、一応見せたけど見てもわからんよね。ただ一度も全力で走れたことがないんだよ。
物心ついた頃から上手く走れないことは自覚してたからスポーツとかには一切興味持てなかったけど、中学入ったあたりにさ、もし走れてたらスポーツにも興味を持てていたのかな、何か部活とか入ったのかな、とふと思ったの。それがいつか村を出ようと決めたきっかけだったのよ。」
「そうなんですね。やっぱり走り回れないイコールお淑やかに育つというイメージから始まった風習なんでしょうか?」
「昔婆ちゃんに聞いたことがあって。あ、婆ちゃんも足悪いんだけどね。何で自分も婆ちゃんも足悪いのって聞いた時に教えてくれたの。
昔ね、村によく働く美人な娘がいたそうなの。この娘が町の金持ちの商家の息子に見そめられて縁談が組まれたんだけど娘は山向こうの農家の男と愛し合ってたらしいの。
父親に何度も農家の男と添い遂げたいと懇願するも商家との繋がりを作りたかった父は頑として受け入れなかった。

しかしどんなに強く言っても納得しない娘に腹を立てた父は何と棒で娘の足を殴り折ってしまったの。
その後、足の治りが悪く以前のようには働けなくなった娘に対して農家の男は徐々に冷たい態度を取るようになっていったの。農家だからこそ元気に働けることは重要だったのかしらね。
一方娘の美しさに惚れ込んでいた商家の息子は娘に、働けなくてもいいから私のそばにいておくれと囁いた。
心身ともに弱っていた娘はその言葉にコロッと落ちてしまったの。

その後2人が結婚して数年たった頃、地域一体に干魃が起こって多くの餓死者が出たんだけどこの村は町の商家からの援助を受けられたために1人の餓死者も出さずにこの災害を乗り越えることができたそうなの。
このことから村では足の悪い女は村に幸福をもたらす、良い嫁ぎ先に恵まれるという風に解釈されるようになってこの狂った風習が生まれたそうよ。」
「前時代的な価値観ですね。それで本当に女性が幸せになるとは思えないんですけど。」
「そうよね。ただ婆ちゃんの解釈ではこの娘は足が悪くなったおかげで幸せになったんだ、農家に嫁いでたら毎日しんどい仕事をしなくてはならなかったけど、商家に嫁いだから何不自由なく暮らせたんだよって言っててそれは確かにそうかもなって思った自分もいたんだよね。
まあ私はこれからもバリバリ働きますけどね!」
「今あの村の全世帯の6割が生活保護受給してますよね。高齢化が極度に進んでいるうえに、まともな産業もない地域なので仕方ないのかもせれませんが・・・。現代ではあの村は商家ではなくお上に養われているんですね。」
「そうそう、足が悪い女がいるから車が持てる、だから暮らしていける。因果なものよね。あながち言い伝えも間違いではないのかもね。」

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