——それを、昔の人はこう呼びました。
憑依、と。
シャッターを切った、その瞬間。
二枚の鏡の間に開いた道を通って、
“それ”は、あなたの中に入ってきたのです。
翌朝、鏡に映るあなたの姿は変わらない。
だって、映っているのは、いつもの自分の姿ですから。
——中身が、違うだけで。
友人が言います。
「あいつ、最近人が変わったよな」
家族が言います。
「あなた、なんだか別人みたい」
恋人が言います。
「……あなた、誰?」
その問いに、答えているのは。
もう、元のあなたではないのかもしれません。
……ところで。
一つだけ、腑に落ちないことがあるんですよ。
この噂——
「午前2時、とあるビルを背景に自撮りをすると、違う自分になれる」——
この、あまりにも都合よく、
あまりにも精巧に、
合わせ鏡の条件を満たすように作られた手順。
これを、最初に流したのは、いったい誰なんでしょうね。
偶然の産物、なのでしょうか。
誰かが面白半分に思いついた、ただの都市伝説なのでしょうか。
それとも——
……あちら側の“誰か”が。
こちらに入ってくるための扉を、
増やしたかったのでしょうか。
この話は怖かったですか?
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