家族が言います。
「あなた、なんだか別人みたい」
恋人が言います。
「……あなた、誰?」
そう。
確かに、何かが変わっていたのです。
さて。
ここで少し、昔から言われている話をしましょう。
古くから、日本には「合わせ鏡」という禁忌があります。
二枚の鏡を向かい合わせに置くと、その間に無限の像が生まれる。
そして、その無限に続く奥行きは、あちら側とこちら側を繋ぐ道になる。
霊道、と呼ぶ人もいます。
丑三つ時。
午前2時から2時半。
最も、あちら側との境界が薄くなる時間です。
……もう、お気づきでしょうか。
ガラス張りのビル。
それは、あなたを映す一枚目の鏡。
自撮りのために向けた、スマホの画面。
インカメラを起動したその画面は、あなたを映す二枚目の鏡。
その、二枚の鏡の間に。
午前2時、あなたは立っていた。
そう。
あなたは、自分の意思で。
自分の手で。
——合わせ鏡を、作っていたのです。
“違う自分になれる”。
その言葉の意味を、もう一度、考えてみてください。
自分が、自分でなくなる。
自分の中に、自分ではない何かが入り込む。
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