それから1ヶ月ほどしてね、田辺さんはまとまった休みを取って、車を走らせて村田の家に向かったんです。
「俺の故郷も相当な田舎だけどよ、村田の家は、そこからさらに奥に入った、もう山の中の田舎だった」って田辺さんは言ってましたね。
村田は「古い民家を安く買ったんだ」って、そこに奥さんと子供と暮らしている。
久しぶりの再会です。
待ち合わせの駅までは車で3時間掛かった。古い親友との久々の再会じゃないですか。そんな長い道のりもそれほど苦ではなかったんです。やっとこさ着くと、駅にはポツンと軽トラが1台停まっていた。もしかしてあれか?とゆっくり近づくと、運転席から男が下りてきた。
“村田だ”
出迎えてくれた村田は幾分貫禄は増していたが、学生時代まんまの感じだった。元気だったかとかいい車乗ってるなとか、お互い軽い挨拶を交わした後、このあたりは大した飯屋もないからうちで昼食にしようと村田は提案してくれた。
村田が先導して車を走らせ、田辺さんは付いていく。田舎道を走っていくと次は林道、それを抜けるとまた人気のない道。村田はどんなところに住んでいるんだ?と興味がわくと同時に、あまりにも辺鄙な場所に住んでいることに少し心配になったそうです。
人気のない集落を進んだ先に、古びた家があった。俗に言う古民家ってヤツですよ。車を停めると村田が下りてきて、まぁこんなところだけどゆっくりしていけって言うんですね。
家にあがると昔ながらの古い農家の家という感じでしてね。慌ただしく村田が素麺を用意してくれて。それを食べながら色々と話をしたそうです。
そして夜になって、居間で酒を酌み交わしながらね、尽きることなく話を続けた。なにせ10年近く会っていないんです。そりゃ積もる話もあるわけで。
で、酒が進むうちに、田辺さん、疑問に思っていたことを訊いた。
「あれ? そういえば、お前のところの奥さんと子供はどこに行ったんだ?」って。
村田は笑いながら、「ああ、あいつらは今、実家に帰ってるんだよ」って答えた。
夜もすっかり更けて、お酒もいい感じで回ってきた頃です。
田辺さん、ちょっと酔いに任せて、からかうように言ったんです。
「おい村田、お前さぁ・・・本当は結婚なんかしてねぇだろ! 独身のくせにカッコつけやがって」って。
そしたら村田が、ニヤッと笑って、
「なに言ってんだよ、ちゃんといるよ」
「なら証拠見せろ証拠!」
「疑ってんのか?なら証拠を見せてやるよ」って、居間にある箪笥から一枚の写真を持ってきた。
「どれどれ・・・」
田辺さんは、その写真をのぞき込んだ。
・・・その瞬間です。
田辺さんの全身の血が、一気にサーッと引いていった。凍りついたように動けなくなった。
見せられた写真に写っていたのは、奥さんと子供・・・なんですがね。
その、奥さんと子供の「首から上」が、すっぽりと写っていなかった。
「え・・・?」
頭が真っ白になって、心臓がバクバクと音を立てる。
「おい、村田、これ、何の冗談だよ・・・?」
震える声でそう言いながら、目の前の村田のほうを、おそるおそる見上げたんです。





























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