奇々怪々 お知らせ

不思議体験

とくのしんさんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

友人の末路
長編 2026/08/03 09:45 191view

えー、私、これでも長らく怪談なぞという商売をやらせてもらっておりますがね。今でこそこうして、あっちの舞台、こっちの座敷へと声をかけていただきますが、まだ右も左もわからねぇ、駆け出しの頃の話でございます。

ある寄席の帰り、ふっと立ち寄った薄暗い居酒屋のカウンターの隅でね、よく見かけるお客様とばったりあった。いつも良く来てくださって、余程怪談がお好きなんですね、と話が弾むなか、その方が自分の話を聞いてくれませんか?と私に言った。

その方を仮に「田辺さん」としておきましょうか。
田辺さん、故郷がね、長野の山間部のほうだと言うんです。
で、その中学高校と、ずっと腐れ縁というか、もう親友と呼んでいい男がいた。名を「村田」と言います。

「中学高校と弱小でしたけど、野球部でずっと一緒でしてね。自分がキャッチャーで、村田がピッチャーだった。とんでもないノーコンでしたけど、球がからっきし速かった。でも不器用なヤツでしたから、変化球なんてろくに投げられなくて」
お互いね、高校を卒業したあとに就職したんですがね、これがまた仲がいいもんですから、就職してからもょっちゅう会っては馬鹿をやってたそうです。
ところが、あるとき田辺さんのほうに九州への転勤の話が舞い込みましてね。そっからパッタリと疎遠になっちまった。

それから数年経ったある日です。

「おい、今度同窓会をやるぞ」ってな報せが届いた。
懐かしいなと思って、真っ先にあの村田に連絡を取ろうとしたんです。ところが、どうにも連絡がつかない。携帯の番号が変わっちまってる。

「まぁいいか、同窓会に行けば誰か知ってるだろ」ってんで、出席したんですがね、肝心の村田の姿はどこにもない。
で、同じ野球部だった仲の良かった別の友人に「村田はどうしたんだ?」って聞いてみたんです。そしたらその友人が、歯切れ悪くこう言うんですよ。
「いや・・・・・・実は村田は、少し前に大きな事故に遭ったらしいぞ」って。

詳しく聞こうにも、誰もはっきりしたことを知らない。
「仕事で海外に行った」といった話から
「借金苦で夜逃げした」
「ヤクザの女に手を出して埋められた」

とまぁとんでもない話まで。

気になった田辺さん、幹事に村田の連絡先を訊いてみたんですがね、どうやら実家の住所まで変わっているらしい。
もともと村田の家は母子家庭でね、お母さんと二人暮しだったはずなんですが・・・・・・。

それからまた連絡がつかないまま、1年ほどが過ぎたある日です。
ピロリと携帯が鳴った。見ると、なんとあの村田からの着信です。

慌てて出てみますとね、向こうの村田はケロッとしたもんで、
「おう、田辺か! いやぁ、すまねぇな!」なんて言う。
聞けば、自分も田辺と同じように県外へ転勤になってたんだと。おまけに結婚もして子供もできて、こっちはこっちで色々とバタバタして忙しかったんだって言うんです。
「最近よ、人づてにお前が俺を探してたって聞いたんだ。すまなかったな」って。

で、村田がこう続けたんです。
「今度さ、時間があったらうちに遊びに来いよ。かみさんと子供と待ってるからさ」って。

1/4
コメント(0)

※コメントは承認制のため反映まで時間がかかる場合があります。

怖い話の人気キーワード

奇々怪々に投稿された怖い話の中から、特定のキーワードにまつわる怖い話をご覧いただけます。

気になるキーワードを探してお気に入りの怖い話を見つけてみてください。