しばらくして、あの初老の老人が同い年くらいの三つ編みの少女を連れて部屋に入ってきた。
しかしどうもその少女の様子がおかしい。まるで誰かに上から操られているようなおぼつかない足取りで、視線は虚ろにあらぬ方向を見ている。
どうしたのだろう、と少女を見つめていると、突然悪寒が走った。頭が割れるように痛い。
自分の額から流れ込むようにして、その少女の気配のようなものが感じられる。
生きて、いない。
今まで見てきた、この世に存在していないものの気配。それがあの少女から伝わってくる。
しかし、その身体は動いている。おぼつかない足取りではあるが一見して普通の人と変わりない。
だが、シノさんにだけは、その少女がこの世のものではないことが分かっていた。
こちらに近づくたびに少女の姿がはっきり見える。
瞬きをしないこちらを見ない目、バスローブからあらわになった、血の気を感じられない青白い肌。
ひっ、とベッドで後ずさるシノさんに、少女が覆い被さるようにのしかかる。
とても生きているとは思えない、冷たい肌が触れる。
近づくほどに、気配がどんどん流れ込んでくる。激痛とともに、その気配のようなものがその少女自身が抱く暗い感情を形作っていった。
それからの少女との営みは、まるで地獄がこの世に顕現したかのように感じられた。
少女が自分の口や身体に接吻するたびに、身体を食いちぎられる想像をしてしまう。身体を重ねるたびに憎悪が自分に流れ込んできて、自分自身の輪郭を見失うような感覚に襲われる。
恐怖で体は動かない。涙と嗚咽が止まらなかった。
周りに目をやると周囲の男たちは気味の悪い笑みを浮かべて、各々で欲望を満たしている。
その奥、あの初老の男は何をするでもなく椅子に座ってただこちらをじっと見ていた。
その時、はっきりと分かった。
こいつらはみんなこの女の子がどういう存在なのか知っているのだ。もはや本来の生命が終わったこの子に何らかの作用を加えて、生きた者とまぐわらせることに快楽を見出しているのだ、と。
自分の上で動く少女を見る。
いまや流れ込んでくる激情は明確な殺意の像を結んでいる。この世を全て呪い殺そうとするほどの感情はしかし、それを発散することもできないまま、ただ欲望の傀儡として動いている。シノさんは絶望や恐怖がないまぜになったそのベッドで、機械的な行為が終わるまでただひたすらじっと我慢し続けていた。
永遠とも思える行為がようやく終わった時、その少女は静かにベッドを離れて、また初老の男性に連れられて部屋を出ていった。次に部屋にいた男たちもぞろぞろと室内を後にする。
部屋に一人残ったシノさんは、しばらく動けなかった。ただ、涙が止まらずしばらくの間泣いていた。
いつのまにか帰ってきていた初老の男性が、シノさんの身体をタオルで拭う。
「あの子は、何なんですか?」
絞り出した言葉に、初老の男性はただ笑みを浮かべる。
「また、次もよろしく頼むよ」
それだけ言うと、部屋を出ていった。
























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