この日Aさんは仕事でトラブルがあり、終電でなんとか帰宅の徒についた。
ところが、最寄り駅まであと5駅というところで事故で電車が停まってしまった。
駅構内では駅員が慌ただしく駆け回っているが復旧にはかなり時間がかかりそうであった。
乗り換え駅でもないので他の路線で迂回もできず、タクシー乗り場は長蛇の列でいつ乗れるかもわからない状態であり、どうしようかと途方に暮れていたAさんは近くのバス停に自分の家がある方面に行くバスが停まっているのを発見した。
停車するバス停を確認したところ、バスの終点で降りてから30分歩くことにはなるが、電車の復旧やタクシー待ちの列に並ぶよりは早く帰れそうだったのでそのバスに乗って帰る事にした。
バスにはそれなりに乗客はいたが最後部の座席が空いていたのでそこに座り、すぐにバスは発車した。
途中のバス停で他の乗客は降りていき、最終的に乗客はAさんだけとなった。
次がAさんの降りる終点のバス停となり、バス内には次が終点であることを知らせるガイダンスが流れる。
もうすぐ終点に着くという頃、突然車内に「ピンポーン♪次、降ります」とガイダンスが流れて降車ボタンが点灯した。
程なくしてバスは停まり、Aさんは座っていた最後部の座席を立ち、先頭の運転席横の運賃BOXで支払いを済ませてバスを降りた。
バスはゆっくりと発進し、やがて夜の住宅街に消えていった。
ここからは夜の暗い道を1人で歩いて帰るしかなかったのでAさんは自宅に向かって歩きだした。
ところが、歩いている最中ある事に気付いたAさんは全身から血の気がひいた。
乗客が自分しかいないバスの車内で降車ボタンを押したのは誰だ?
バスの最後部に座っていたので自分以外に乗客がいなかった事は確認できている。
暗い夜道も相まって気味が悪くなったAさんは近くのコンビニに飛び込みタクシーを呼んだ。
数分後にタクシーが来たので乗り込み運転手に行先を告げた。
しかし、タクシー運転手は車のドアを閉めず辺りを見回すような仕草をしている。
Aさんは「あの?どうかされました?」とタクシー運転に尋ねた。
タクシー運転手は怪訝(けげん)そうな顔をしながらAさんにこう尋ねた。
「あれ?お連れさんは乗られないんですか?今2人で乗られましたよね?」

























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