私の5歳になる娘は、数か月前から部屋の隅に向かってよくおしゃべりをしています。
「見えないお友達」がいるのは子供によくあることだと、私は特に気にもとめていませんでした。
でもある日、娘がその虚空(こくうと読みます)に向かって嬉しそうにこういったのです。
「うん!わかった!じゃあ、お母さんが寝たら、お人形で遊ぼうね!」
微笑ましく思った私は、娘が寝た後にそっと部屋をのぞいてみました。
すると娘は、私が数年前になくした姉の形見である「古い市松人形」を抱いて、すやすやと眠っていました。
「なぁんだ、あのお人形で遊ぶ約束だったのね。」
私は安心して自分の寝室に戻り、ベットへつきました。
しかし、布団の中でふとあることに気づき、心臓が凍りつきました。
娘の部屋にあった市松人形は、先週壊れてしまったので、私が自分の手でバラバラに解体してゴミに出したはずです。
では、いま娘が抱いて寝ている、あの「髪の長いお人形」は一体誰なんでしょうか。
その時、暗闇の足元から、聞き覚えのある姉の声が聞こえました。
「あの子、私とお人形で遊ぶって約束してくれたよ。」
私は死んでしまった姉が何をしようとしているかやっと分かりました。
私がバラバラにした市松人形の代わりに、姉が娘を「新しいお人形」にするために連れ去ろうとしていることを。
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