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ヒトコワ

プーくんさんによるヒトコワにまつわる怖い話の投稿です

隔離された部屋
短編 2026/07/18 07:57 99view

夜中に目が覚めることはなかった。
太陽の光で目を覚まし、ホッとしながらスマホを手に取る。
録音データを確認すると、6時間ほどのファイルが作成されていた。
波形をみると、深夜3時を過ぎたあたりで、細かな山がいくつもできている。

僕はイヤホンを耳に差し込み、その部分を再生した。

最初は静寂。
やがてあの「カリカリ」という音が聞こえ、次に「トントン」と壁を叩く音が続く。
ここまでは昨日と同じだった。
しかし、録音データのなかのぼくは、昨日と違って壁をたたき返していない。
ぐっすり眠っているはずだった。

それなのに、音は止まった。
イヤホンから衣類がすれるような「ズズ……」という引きずる音が聞こえる。

いや、違う。

音が、部屋の「内側」へ移動している。

画面に表示された録音波形が、急激に大きくなった。
イヤホンの向こうで、僕自身の静かな寝息が聞こえる。
そして、そのすぐそばで、ハァハァと激しい息遣いが混じり始めた。

寝ている僕の耳元に、何かが顔を近づけているのだ。

カサッ、という小さな音の後、女の震える声が、信じられないほど鮮明に鼓膜を揺らした。

「みーつけた」

鳥肌が止まらなかった。
声はそこで途切れてはいない。女はつぶやき続ける。

「このこ、おきてるときは、壁を叩く。寝てるときは、叩かない。……ねえ、今はどっち?」

息が止まった。
恐怖でスマホを落としそうになった瞬間、イヤホンから最後の音が流れた。
カチリ、と硬いものが押される音。

それは、僕が今、まさにこの音声を「再生」した時のスマホの操作音だった。

録音された過去の音声の中に、今現在の僕の行動が混ざっている。
いや、違う。

女は、過去に呟いていたのではない。

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