コバヤシさんは定年退職後のセカンドライフを満喫している。
今日は久しぶりに孫の竜君と外食に出かける約束をしていた。
「お爺ちゃん、百貨店のレストランでカツレツ食べたい!」
「よし、今日は好きなものを何でも食べていいぞ」
実はコバヤシさん、先日の菊花賞で大穴を当てていた。
「僕、カツレツだけでいい!」
竜君は嬉しそうに市電の車内ではしゃいでいる。
車内を見回すと、赤い鼻をした酔っ払いが座席を占領して寝転がっていた。
少し離れた場所では、男が携帯電話で大声を上げている。
「しゃあないやろ! そんなこと言うても、しゃあないやろ!」
別の男も電話をしている。
「だから、とは違うんだよ。とは!」
どちらも古い折りたたみ式の携帯電話を使っていた。
扉の近くでは、しゃがみ込んだ女性が不気味な笑い声を漏らしている。
「ぐふっ……ぐふふ……」
コバヤシさんは違和感を覚えた。
(そういえば……この人たち、いつ乗ってきたんだ?)
市電は走り続けている。
一度も停車していない。
その時、スマートフォンが鳴った。
画面には、
【ヤシマ 090-○○○○-0079】
と表示されていた。
娘の元夫からだった。
「お父さん! 今どこにいるんですか?」
「どこって、これから竜と百貨店へ……」
電話の向こうで、ヤシマが困ったような声を出した。
「何言ってるんですか……。
一人で突然出て行ったから、みんな心配してるんですよ」
コバヤシさんは言葉を失った。

























亡(ぼう) フラウ・ボゥ
霊(れい) アムロ・レイ
増(ます) セイラ・マス
市電(しでん) カイ・シデン
コバヤシさん ハヤト・コバヤシ
竜君 リュウ・ホセイ
カツレツ カツ・レツ
菊花賞 キッカ
赤い鼻 赤鼻
「しゃあないやろ」 シャア・アズナブル
「だから、とは違うんだよ」 ザクは違うんだよ
「ぐふっ……ぐふふ……」 グフ
ヤシマ ミライ・ヤシマ
090-○○○○-0079 宇宙世紀0079
未来駅 ミライ・ヤシマ
裏タイトル 怪・市電