ああ、ちょっとしょんべんしたくなってきたわ。
ま、ここでしちゃってもいいだろ。犬だし。
犬って電柱とかによく引っかけてて、あれって縄張り争いとか、ただのコミュニケーションのためだよーみたいな色んな見方があるらしいけど、そもそも今の俺には縄張りどころか居住スペースすらどこなのかわからないから、まあ適当にしちゃっていいか。
シャーーーって感じでしょんべんしてるのが気持ちいい。
人が見てるっていうのでちょっと照れもあるけど、でもなんかそれがまたちょっと気持ちよく感じる俺はもう犬の気持ちが板についてきてるってことなのか?
こういう順応性の速さは異世界転生には必須のスキルだよな。
——遠くでたくさんの人の声が聞こえる。
なんて言ってるのかわからないけど、さっきよりも声が大きくなった?
たっぷりの排尿が終わった俺の耳に「はい!」っていう短く大きな声と、パン!っていう手を叩いた音がハッキリと聞こえる。
あれ、なんかクリアになった?
音も……視界も。
目の前には、黒マント姿にシルクハットを被った男が立ってて、サングラスとちょび髭メイクっていう、コメディアンなのかマジシャンなのか判然としない如何にも胡散臭そうなそいつは、何とも言えない顔で俺を見下ろしている。
俺はただきょとんとするしかなくて、その男が発する言葉を聞かされる。
「ちょっとプロデューサー、ダメだよこれ。お蔵入りだね。20年以上この仕事やってるけど、こんなに催眠にかかり易い人初めてだよ。でも流石に全裸でおしっこしちゃまずいでしょ。テレビ的にアウトだもんね。……え? これ生放送なの? はは、終わったねこの子」























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