そう、俺はなぜか落ち着いてきている。
なぜだろう?
多分、死を受け入れてるからなのかもしれない。
遊佐が笑顔で死んでいったことも関係してるのかもだけど。
ああ、死ぬことってそんなに恐れることじゃないのかな? みたいに考えてしまっている。
痛いだろうなとか怖いだろうなとか、経験したこともないのに、ちょっと恐れすぎじゃないだろうか? みたいな。
そんなことを考えてたら、涙を服の袖で乱暴にふき取った遊佐母が、俺を指差して「次は彼をお願いします」とモヤに頭を下げる。
脳みそもないであろうこんな奴と意思疎通なんてできるのかよっていうのは俺の杞憂だったみたいで、そいつは遊佐の時と同じく、俺に向かって触手のようにモヤを伸ばし、足首に巻き付け、一気に引き寄せる。
尋常じゃない怪力に足を引っ張られて投げ飛ばされたみたいな感覚だったけど、俺の頭はそのままモヤに突っ込んでしまって、もう目も耳も鼻も口も全部なくなってしまった俺は何も感じられなくなる。
そりゃそうだ。
頭がなくなったってことは脳みそがなくなったってことだもんな。
あれ、でもじゃあこれはどこで思考してるんだろ?
実は物事を考えるのって脳みそじゃないんだろうか。
体が覚えてるみたいなこと言うけど、考えるのも体の別の部分なのかもしれないな。
モヤの食事は進み、あっという間に俺の身体はヘソくらいまでなくなってしまう。
痛みはなかった。
食われてく感覚も、体がなくなっていく実感も。
ただ、命が尽きるっていう事実だけを、漠然と感じてるみたいな。
もはや、俺の身体が完全に消滅してしまうのに1分もかからないだろう。
俺は自分の命が尽きていく中で、最後にどうでもいいことを考える。
あーあ。
せっかく少しは大人になれたと思ったのにな。
太腿の半分くらいまで食われながら、、俺は天使の笑顔を思い出す。
陽葵先輩。
俺の天使。
そういえば、先輩は最後になんて言ってたっけ。
ああ、もう膝まで食われたか。
あと少しだな。
俺は今どこでこれを考えてるんだろう。
ふくらはぎか?
まあどうでもいいか。

























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