奇々怪々 お知らせ

不思議体験

入月麗奈さんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

放課後の片想い
長編 2026/05/13 21:51 1,005view

 普段誰にも見られることなく、静かに時を刻み続けている空き教室の壁に掛かっている時計を見て俺は、今日の部活はサボることに決めた。

「ほんとにいいのか?」

 1時間後。俺は隣を歩く遊佐に3回目の確認をする。

「いいよ」

 満面の笑みを浮かべ、遊佐も同じく3回目の返答。

 あの後、遊佐が泣き止むまでたわいもない話をしていたら、遊佐から「じゃあ今日は残念会をしよっか」と提案され、ファミレスかどこかでちょっと食べるみたいな感じかなと思った俺はその誘いに乗り、2人で学校を出てから行き先を確認すると「あたしんち」と言われ驚きを隠せなかった。

 え? 遊佐んち? いきなり? いや、いきなりっていうか、あれ、まあいいのか。友達んちに行くのに理由とかいきなりとかそういうのはないもんな。

 っていう感じで歩きながら、でも親とかいたらはしゃげないし落ち着かないしなとかも頭を過ぎって、遊佐に何度も確認してしまったのだけれど、遊佐は嬉しそうに「いいよ」としか言わない。

 まあ、遊佐がいいって言うならいいんだろう。

 学校から15分くらい歩いたところにある一軒家が遊佐家だった。

 ごくありふれた二階建て一軒家。うちはマンションだから他人が隣接する部屋に住んでいないっていう感覚がわからなくて、ちょっと憧れみたいな気持ちで玄関前で見つめていると、いつの間にかすぐ隣に小学生男子が立っていた。

「こんにちは」

 深々と頭を下げ、礼儀正しく挨拶する子供はほぼ間違いなく遊佐の弟だろう。顔も似てるし、まあどう考えてもこの家の子供だろうなっていう俺の予想は正しくて、そいつは姉であろう遊佐に対して何か思いつめたような表情で数秒見つめていたけれど、無言のまま玄関ドアを開け、中に入ると音もなくドアは閉じられる。

「今の弟?」
「そうだよ」

 顔は遊佐に似てる部分もあったけれど、性格は真逆だなとは言わなかった。まあ別に遊佐も失礼な奴ってことでもないけど。
 あと、さっきの表情も少しだけ気になる。悲しげというか、寂しげというか。

「さ、入って入って」

 俺の背中を押しながら玄関ドアを開ける遊佐。
 というか、今更ながら緊張してきた。

 だって、女子の家とか初めてだったから。
 ……そうだよ。よくよく考えたら彼女とか以前に、女子の部屋に行くなんて小学生の頃だってなかったぞ。
 まして部屋で2人きりだなんて。

 ……エロい妄想はやめておこう。
 なんか恥ずかしくなってくるし、絶対ぎこちなくなるから。

「おかえり」

 中に入ると妙齢の女性が立っていた。
 もちろん遊佐の母親だろう。
 ていうか、めちゃくちゃ似てるな。20年後にはこうなってるだろうなって想像通りの顔。身長は少し高めだけど。

「ただいま」
「あ、お邪魔します」

15/21
コメント(0)

※コメントは承認制のため反映まで時間がかかる場合があります。

怖い話の人気キーワード

奇々怪々に投稿された怖い話の中から、特定のキーワードにまつわる怖い話をご覧いただけます。

気になるキーワードを探してお気に入りの怖い話を見つけてみてください。